**
ミツちゃん本当可愛い子だったなぁ。
きっと、今頃はもっと美少女になっているに違いない。
彼女の大きくなった姿を想像し、私はふふっと微笑んだ。
昔は知らなかったけど、今思えば、ミツちゃんの髪色って蜂蜜色だったんだよね。
そう、まるであんな感じの……。
ふいに前を歩く蜜生くんの髪色が目に止まる。
彼の蜂蜜色の綺麗な髪がサラッと風になびいた瞬間、なぜかドキリと胸が高鳴った。
そういえば、ミツちゃんと蜜生くんってちょっと似てるような……。
「あ!あったよ〜!駄菓子屋さんってここじゃない?」
その時、美春ちゃんの大きな声が聞こえ、ハッと我に返る。
「なんか昔ながらの駄菓子屋って感じでいい雰囲気じゃん」
「お、俺このお菓子よく食べてたわ」
青山くんも篠田くんも興味津々な様子で、店頭に並んである駄菓子屋を眺めている。
やっぱりここって、前に私がお父さんと来た駄菓子屋さんなんじゃ……?
見たことがあるような外観に1人首をひねる。
ただ、昔食べた定食屋さんが見当たらなくてはっきりと断言はできなかった。
「あらあら、可愛らしいお客さん達。この辺では見たことない制服やね」
店の奥からひょこっと顔をのぞかせたのは、50代くらいの少しぽっちゃりとした優しそうなおばさんだ。
目尻を下げ「いらっしゃい」と言ってくれるおばさんに私もつい笑顔になる。
「私達、修学旅行で来てるんです」
皆を代表して美春ちゃんが、そう答えると「それはええね。大阪楽しんでいってな」とおばさんはニカッと気持ちのいい笑顔を見せてくれた。
「それにしても学生さんがこの辺、観光に来るのも珍しいわ。観光スポットより少し奥にある商店街やから気づかん人もおおいんよ」
「実は、駄菓子屋さんに行ってみたいってリクエストがあったんです」
初奈ちゃんがそう言いながら、蜜生くんに視線を向けると、おばさんもつられてそちらの方向に顔を向けた。
「まぁまぁ、えらいべっぴんさんやね!芸能人みたいや」
蜜生くんの姿を捉えた瞬間、目を丸くするおばさんに心の中で私も大きく頷く。
蜜生くんがその辺のアイドルよりも、綺麗な顔立ちをしているのは事実だったから。



