そう言って、私は満面の笑みで父が座っている方向を指差す。
『私のお父さん、強いんだよ。空手のチャンピオンになったこともあるんだって。だから、私もお父さんみたいな強い人になりたいんだ〜。今日の空手大会も優勝するのが目標なの』
『詩桜ちゃんも空手するの……?』
『うん!今は空手と柔道と合気道やってるよ!』
『……へぇ、すごいんだね!』
素直に目を丸くするミツちゃんの言葉に、私はつい照れ笑いを浮かべてしまった。
その後、しばらく話をして少し打ち解けてきた私達は店内を一緒に回りながらお菓子を選ぶことに。
『そうだ!ミツちゃんは何のお菓子選んだの?見せて〜』
『うん。いいよ』
手に持っていたカゴの中を見せてくれたミツちゃん。
私は彼女のカゴに入ったお菓子をのぞき込む。
ガムやラムネ、スナック菓子など色々な種類の駄菓子が入っている中、私はいくつかのお菓子に目がとまった。
『ミツちゃん梅味好きなの?ガムもアメも梅味だ!』
『うん。けど、今住んでるところには梅味ってなかなかないからこんなにあって嬉しいんだ』
梅味のガムを手に持って嬉しそうに微笑むミツちゃんの様子に私はキョトンとしてしまう。
梅味がないところってあるのかな?
ミツちゃんどこに住んでるんだろう……。
そんな疑問が頭をよぎった時。
『ミツさん、決まったかな?そろそろ行こうか』
60代くらいの優しそうなおじいさんがミツちゃんに声をかけてきた。
ミツちゃんのおじいちゃん?
上品な紳士といった雰囲気のおじいさんは私と目が合うと小さく会釈をしてくれる。
『……うん、わかった』
少し残念そうな様子のミツちゃんは、おじいさんに向かって素直に頷いた。
せっかく仲良くなれたのにもうバイバイか〜……。
私自身も、レジに向かうミツちゃんの後ろ姿に残念な気持ちでいっぱいだった。
『あのっ、詩桜ちゃん。今日は会えて嬉しかったよ』
会計を済ませたミツちゃんが、おじいさんと駄菓子屋を出ていく直前、私に向かって最後にそう声をかけてくれる。
『うん!私もだよ。ミツちゃんみたいな友達ができて嬉しい。また絶対会おうね!』
私の言葉に一瞬、目を見開いたミツちゃんは、次の瞬間、今日1番の笑顔で『うん!また会おうね』と大きく手を振ってくれたのだった――。



