『おばあちゃんに?そうなんだ〜!』
父の母、私にとっては祖母にあたる遠城寺佳子は、私が生まれてすぐに病気で亡くなってしまったらしい。
だから、私にはおばあちゃんの記憶は全然なくて。
ただ、赤ちゃんの時の私を抱っこした写真は見たことがあり、顔だけは知っていた。
『母さんも父さんが、大会で優勝した帰りは奮発して買ってくれてなぁ。よし!せっかくだし前祝いだ!詩桜の好きなお菓子500円分買っていいぞ』
『え!?いいの!?』
まさかの発言に、私はパチパチと目を瞬かせる。
『その代わり絶対優勝だぞ〜!さ、あんまり時間もないから早く選びなさい』
『うん!お父さんありがとう』
早速、駄菓子屋の入り口にあったかごを手に取り、ウキウキした気分で商品を物色する。
父は店の前に置かれたベンチに腰を掛け、私がお菓子を選ぶ間待つことにしたようだ。
どれにしようかなぁ……。
私が一生懸命お菓子を選んでいたその時ふと、店内に同じくらいの年齢の女の子がいるのに気づく。
少し短めの明るい髪色が珍しくて、つい私の方から声をかけてしまった。
『ねぇねぇ、あなたの髪綺麗な色だね』
『え……?』
突然声をかけられて驚いたのか一瞬、ビクッと肩を揺らし、女の子はくるりと私に向き直った。
色白の肌に、ピンク色の頬。
くっきりした二重に、くるんと上向きにカールしたまつ毛。
まるでお人形のようなその綺麗な顔を真正面から見た私は、あんぐりと口を開けて呆けてしまった。
わぁ、可愛い子だなぁ。
『こんにちは、私、詩桜っていうの。あなたは?』
『……ミ、ミツ』
人見知りなのか、もごもごと口ごもる少女はふいっと怯えたように視線をそらす。
そうだよね、急に知らない子から声かけられたらビックリするよね。
『ミツちゃんっていうんだ!私ね、今日こっちの方に初めてきたの!ミツちゃんはこの辺に住んでるの?』
なるべくフレンドリーに笑顔で話しかける私に対して、少しだけ警戒心が解けたのかミツと名乗った少女は、ふるふると首を横に振った。
『ぼ……、私、旅行できてるから』
『そうなんだ〜。私も今日はお父さんと来たの。ほら、店の前に座ってるのが私のお父さん』



