基本的に学校内では目立たないようにと、周りに合わせて行動している蜜生くんが自分から意見を言うなんて珍しい。
皆もそう思ったのだろう。
「いいじゃん。今日わりと俺たちが行きたい場所ばっかりで佐藤に付き合ってもらったところ多かったし、最後は佐藤の行きたい所行こうよ」
そんな青山くんの言葉を皮切りに、他の皆も「そうだね」と賛成してくれた。
「それで、どこに行きたいの?」
初奈ちゃんの問いかけに皆の注目が蜜生くんに集まる。
「……商店街の中にある駄菓子屋なんだけど」
駄菓子屋?
もっと観光名所的なところを言われるかと思っていた私は、予想外の返答にキョトンとした表情を浮かべてしまう。
けど。
「そっか〜。佐藤くんは帰国子女だもんね。日本の趣のある商店街とかのほうが興味ある感じだ!」
「駄菓子屋か〜。検索したら出てくるんじゃない?佐藤、その店名わかる?」
美春ちゃんは1人納得したように頷き、青山くんに至ってはポケットからスマホを取り出し、早速駄菓子屋までの道のりを調べ始めていた。
「駄菓子屋は私も幼稚園生の頃くらいから行ってないなぁ。近所に昔あったんだけどいつの間にかなくなってたのよね。詩桜は最近行ったことある?」
初奈ちゃんに声をかけられ、私も昔の記憶を思い起こしてみる。
「うーん、私も小学生の時が最後かな?たしか家族で大阪に来たことがあるんだけどその時……」
そこまで口に出して、私はふと昔のことを思い出した。
そう、たしかあれは小学校に入学してすぐ。
私が空手の全国大会で大阪に行った時のこと――。



