青山くんも篠田くんもサッカー部でお互い仲が良いらしく、教室内でも2人で行動している姿をよく見かけていた。
「えっと〜……」
何と答えていいか分からなくて、チラッと美春ちゃん、初奈ちゃんに視線を向けてみると。
「私はいいよ!」
「……そうね。青山と篠田だったら頼りになりそうだし」
美春ちゃんは満面の笑みでコクコクと頷いており、男子に手厳しい初奈ちゃんも賛成のようだ。
その時だった。
「ねぇ、よかったら俺もまぜてくれる?」
背後から聞こえてきた明るい声に私はサーッと血の気が引いていく。
声の主は、言うまでもなく蜜生くん。
端から聞けば、普通の声のトーンなのだろうが、これは確実にイライラしてる時の蜜生くんの声色だ。
な、なんか蜜生くん機嫌悪い……?
私、何か怒らせるようなことしたかな??
不機嫌な理由がわからず、私は戸惑いを隠せない。
「普段から詩桜が俺のフォローしてくれてるから、俺も同じグループの方が安心なんだよね」
サラッとそう呟いた蜜生くんに私はハッとする。
今のってたぶん……。
『お前、俺のボディーガードなんだからグループ一緒じゃないと意味ないだろう』
って意味だよね……??
たしかに修学旅行期間は、学校外での活動になるのだから、いつも以上に狙われる可能性は高くなるだろう。
そこまで考えが至らなかったなんて、ボディーガード失格だ。これは蜜生くんが怒るのも無理もない。
「え!?佐藤くんがうちのグループに!?私は大賛成!!」
「……は?」
声がワントーンあがった美春ちゃんと、明らかにオクターブ低くなった初奈ちゃん。
あからさまに嫌そうな彼女の態度に私は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
さらに、その後も。
「……佐藤くんさぁ、いくら詩桜がお世話係だからって、修学旅行まで一緒じゃなくてもいいでしょ??」
「ハハ、あいかわらず八神さんは俺に厳しいな。そんなに俺と一緒のグループ嫌なんだ?」
「あら、ハッキリ言わないとわかんない?」
互いに笑顔を浮かべつつも、嫌味の応酬を続けている2人に私は気づかれないように肩を落とした。
「えーっと……。俺らはどうせ、男子のメンバーでもう1人誰かに声かけようと思ってたから佐藤が入ってくれるなら嬉しいけど」
初奈ちゃんの顔色を伺いつつ、青山くんが控えめに声をかけている。
彼は、蜜生くんのグループ加入に対して特に異論はないようだ。
「俺も青山と同意見かなぁ……」
篠田くんも青山くんの意見にのっかり、小さく頷いている。
「初奈ちゃん、いくら詩桜ちゃんとられそうで寂しいからって、そんなに毛嫌いしたら佐藤くんかわいそうだよ〜!」
美春ちゃんを含めた3人から立て続けにそう言われ、初奈ちゃんは少しバツが悪そうだ。
「初奈ちゃんっ!あの、せっかくの修学旅行だし、皆で仲良くできたらうれしいな」
「そうだね……」
最終的にコクリと首を縦に振ってくれた初奈ちゃんにひと安心したところでグループが決定した。
女子が私、初奈ちゃん、美春ちゃん。男子が青山くん、篠田くん、そして蜜生くんの6人だ。
一部メンバーに不安が残るものの、せっかくの修学旅行。皆で楽しく過ごせたらいいな。
そんな気持ちで私は「楽しい修学旅行にしようね」と満面の笑みで皆に声をかけたのだった――。



