少し気になってちらりと後ろに視線を向けると、笑顔で女の子達と話している蜜生くんの姿が見える。
ふーん……。蜜生くんもやっぱり可愛い子に誘われたら嬉しいんだなぁ。
その年相応に見える屈託のない笑顔に、なぜかほんのちょっとモヤッとしてしまう自分がいることに気づいた。
「なぁなぁ!やっぱり、大阪といえばたこ焼きとお好み焼きは食べないとだよな」
「私、京都で舞妓さんに会いたいな〜」
修学旅行の話でワイワイと盛り上がりを見せる教室内はだんだんと騒がしさをましてくる。
「おーい、皆、静かに!先生の説明をちゃんと聞かないと、グループ分けはこっちが勝手に決めるからな」
そんな光景にしびれを切らした山内先生の大きな声がクラス中に響き渡った。
その瞬間、シンと教室内が静まり返る。
先ほどまでのうるささは何処へやら、こういう時のクラスの団結力には目を見張るものがあった。
「……いつもこうならありがたいんだけど。じゃあ、まずグループについてだが、女子3人、男子3人の6人グループを作るように。先生は、職員室にいるからグループが決まったら報告してくれ。あ、自習時間内に決まらなかったらくじ引きにするからな〜」
最後に山内先生がそれだけ言い残し、教室を出て行ってしまった後、ガヤガヤと急に慌ただしくなる生徒たち。
どうやら二泊三日の修学旅行を楽しく過ごすために、誰と組むか悩んでいるみたいだ。
「詩桜ちゃん、初奈ちゃん!6人グループだってどうする?」
「そうね。男子グループはどこ誘う?」
パタパタと私の席の近くに集まってきた美春ちゃん、初奈ちゃんも同様で、修学旅行のグループをどうするか気にしている様子。
3人でどうしようかと顔を見合わせていた時。
「なぁ、遠城寺たちよかったら俺らと組まない?」
声をかけてくれたのは、青山駆流くんと篠田隆太くんだ。
青山くんは始業式の日に一番最初に自己紹介をしていた印象が強い。ハキハキと話す姿と、黒髪短髪、爽やかでカッコいい顔立ちも相まってクラスでは蜜生くんに次いで、人気のある男の子だ。
篠田くんは180センチ近い長身でクラスでも1番身長が高い男の子。一見、強面なのだが、話すとすごく優しいし、実際私も黒板消しの上の方が届かなかった時に助けてもらったことがある。



