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「……つまり、山内先生は密生くんと同じアメリカの大学の卒業生で、密生くんの先輩。昔から彼のことを知っていて、今回私をボディガードに推薦したのも山内先生がきっかけってことですか?」
「うん、そうそう。だいたいそんな感じ。いや〜。遠城寺は飲み込みが早くて助かるな」
豪快に笑う山内先生とは対象的に私は苦笑いを浮かべていた。
要約すると、山内先生の話はこうだった。
密生くんとの出会いは5年前。
山内先生が23歳で大学院に通っていた時のこと。
飛び級で大学に入学してくる子どもがいると当時はかなり騒がれたらしい。
その子どもが蜜生くんだった。
しかも、一緒のゼミで研究までしていた、と……。
5年前って10歳だよね?
蜜生くんって、10歳で大学に入ったの……?
それは騒がれるよなぁ。
あまりにもスケールの大きな話に私は唖然としてしまう。
「大学に来たばかりの頃の佐藤は可愛かったんだけどな〜。年齢を重ねるごとにひねくれていって……。正直こっちで同級生の友達ができるか心配してたんだ」
父……いや、年の離れた兄みたいな感覚なのだろうか。
山内先生の言葉からは、蜜生くんのことを本当に心配しているんだなってことが伝わってきてほっこりしてしまう。
「山内先生ってすっごく頭よかったんですね。でも、なんで日本に戻ってきて中学校の先生に?」
詳しくは分からないが、大学で研究するくらいだから先生だってかなり頭が良いはず。だからこそ、普通に日本で中学教師として働いていることが意外だった。
「いや〜。俺、実はずっと教師にあこがれててな?卒業したら教育関係に進むって最初から決めてたんだよ」
「……うちの大学で大学院まで出といて、研究職につかないの先生くらいだと思いますけどね」
呆れたような表情の蜜生くんはハァと、大きなため息をこぼす。
「まぁ、俺には佐藤ほど才能なかったし。今では教師が天職だと思ってるから結果オーライだな」
たしかに山内先生は、生徒の間でとても人気のある先生だ。授業も分かりやすいと評判だから教職が天職と言うのも頷けた。
「……それに俺がこうしてここで教師をしてることで、佐藤のサポートもできてるだろ?」
付け加えるように呟いた山内先生に対して。
「それは助かってますけどね」
不服そうにしながらも、しぶしぶ頷く蜜生くん。
なんだかんだ文句を言いながらも、先生のことを信頼していることが伝わってきてクスッと微笑んでしまった。



