蜜生くんと契約関係を結んだ翌日。
私はいつも通り学校へ登校し、自分のクラスへと足を進める。
それにしても疲れた。
体力はやっぱり落ちてるなぁ。
眠たい目をこすりながら、私は大きく伸びをする。
実は今朝から小学生以来おざなりにしていた朝の鍛錬を再開したのだ。
いざという時に素早く動けないとボディーガード失格だもんね。
ちなみにその光景を見た父は、嬉しさからか涙を流す始末。一応、「大会にはでないからね!」と口を酸っぱくして言ったのだが、浮かれた父の耳に届いているかどうか……。
ハァと、1人で大きなため息をこぼし、ガラッと教室の扉を開けた時。
「詩桜ちゃん!ちょっと聞いたよ!佐藤くんの専属お世話係になったんだって!?」
はい?
登校してきた私に気づいて、詰め寄ってきたのは、鼻息荒い美春ちゃん。
そして。
「遠城寺さん、いつから佐藤くんと仲良くなったの!?」
「やっぱり昨日、式辞の代理したから?」
美春ちゃんに続いて、どっと押し寄せるクラスメイトの女の子達に私は目を白黒させる。
「な、なんの話……?」
理由がわからず、ポカンとしている私をよそに。
「詩桜おはよう。今日からよろしくね」
背後から聞こえてきた優しげな声に、私はおそるおそる振り返った。
そこにいたのは、にこやかな笑みを浮かべた蜜生くん。
端から見れば、うっとりしてしまうくらい素敵な笑顔のはずなのに昨日の悪魔の微笑みを知っている私は思わずひくっと、口もとがひきつってしまった。
「お、おはよう。えっと、専属お世話係って何……?」
嫌な予感がしつつ、私は彼に問いかける。
「ん?やだな、詩桜忘れた?昨日、まだ日本の学校に慣れてない俺のために山内先生がクラス代表で、詩桜を俺のサポート係につけてくれたじゃん」
その言葉に私は絶句した。
呼吸をするくらい自然に嘘をつく蜜生くんに。



