な、なんでため息!?
思わずひくっと口もとが引きつる。
言わなきゃよかった。いつもみたいに適当な理由でごまかせばよかったのに、バカだな私……。
そう思うとなんだか気まずくて、とっさに彼から視線をそらしてまう。
今さらながら、彼に話したことを後悔し始めていた時だった。
「……あのさ、それって君が気にする必要ある?そもそもそんなこと言う男の方が最低なだけでしょ」
「え?」
予想していたものとは違う返答に思わず声がこぼれた。
「で、でも。やっぱり、男より強い女の子なんて可愛くない、でしょ?それに普通じゃないし……」
消え入りそうな声で佐藤くんに問いかける。
自分の強さは、普通とは少し違う――。
物心ついた時から薄々感じでいたこと。
父は褒めてくれたけど、私が数々の大会で優勝する度にヒソヒソと周りから裏で何かを言われていることには気づいていた。
そして……。
『強すぎる女子はちょっと……』
あの日、そう言った男子の言葉は、私の違和感を確信づけたトリガーとなった。
普通にしないと、恋愛もできない。
普通にしないと周りから、変な目で見られる。
なんだか急にそれが怖くなって、懸命に普通になろう、周りに合わせようと、武道を避けてきた私。
佐藤くんなら、なんて答えてくれる……?
ジッと、彼の一挙一動を見逃さないように真っ直ぐ見つめた。
ドキドキと緊張からか高鳴る心臓の鼓動をおさえるために、ギュッと拳を握りしめる。
「……別に?他の奴らがどう思うかは知らないけど、俺は強い女子良いと思う。つか、普通じゃないって言ったら俺だってそうだし」
さも当たり前のように、そう答えてくれた佐藤くんの言葉に思わず泣きそうになってしまった。



