佐藤くんの言葉に納得した私は頷く。
「というわけで君だったら俺と同じ中学生。しかも同じクラス。いっしょに行動してても全然不思議じゃないわけだ。それに、強さはお墨付き。遠城寺さんほど俺のボディーガードにうってつけな人いないんだよ」
「……」
ニコリと口角をあげる彼に私はぐっと押し黙ってしまった。
言ってることは理解できるし、何度も誘拐されかけたなんて危険な目にあっていることにも同情する。
けど、私みたいなちょっと武道をかじった程度の中学生にボディーガードなんかつとまるわけがない。
「あの……佐藤くん。さすがにただの中学生の私にボディーガードなんて荷が重すぎるよ。それに私、もう武道はしないって決めてて……」
もごもごと言い訳するようにできない理由を並べたてる。
「実はさ、そこ俺も気になってたんだよ。遠城寺さんが、武道を辞めた理由はいくら調べてもわからなかった。ネットにも情報なし。新聞にも急に大会にも出なくなって、こつ然と消えたって感じの記事しかない。あんなに大会で優勝してた君が突然武道を辞めた理由は何?」
ジッと彼の綺麗な蜂蜜色の瞳が私を見つめる。
なんだか頭の中まで見透かされているようで、思わずゴクリと息を呑んだ。
「……」
「……」
しばらくお互いに沈黙が流れる。
うーん……。これは本当のことを言うまで解放してもらえそうにないかも。
そう思った私は意を決して。
「……たの」
「え?」
「強すぎる女の子はちょっと無理って、当時好きだった人にフラレたの!」
と言い放った。
「……は?」
私の言葉にポカンとした表情を浮かべる佐藤くん。
いままでの大人びた表情から一変、目を丸くする姿は年相応に見えてなんだかちょっと可愛らしい。
「佐藤くんからしたらくだらない理由って思うかもしれないけど……。私としてはショックだったの。そ、そういうわけで、武道はもう辞め……」
「ハァ……」
そんな中、私の言葉を遮るように佐藤くんは、盛大にため息をこぼした。



