「入りなよ」
ガチャっとドアノブを回し、扉を開けた佐藤くんは私を部屋の中へと招き入れる。
「……おじゃまします」
そんな彼の後らから、部屋の中へ足を踏み入れた私は、中の様子を見て呆気にとられてしまった。
隣の備品室も、パソコン室ですら埃っぽくて普段使われていない雰囲気が出ていたがこの部屋だけは違う。
白い綺麗な壁紙が貼られており、部屋の空調も整えられていて。
机の上にはいかにも高そうな最新のパソコンやモニターが数台置かれていた。
「これって……」
「ここは俺が学校側から与えられた作業部屋だよ」
「作業部屋?いったい何の……?」
近くにあった椅子にゆっくりと腰を掛けた佐藤くんに、私は問いかける。
「……俺は、学校側に依頼されてここでセキュリティー管理を任されてる。このご時世、何でもデータで管理されてるからね。それもあって、個人情報盗もうとサーバーハッキングしてくる悪い奴も結構多いんだ」
カタカタと目の前にあるパソコンのキーボードをたたきながら、慣れた手つきで操作する佐藤くんに私は開いた口がふさがらなかった。
「佐藤くんって、ほんとに私と同い年……?」
「まぁ、年齢はね。でも、去年までアメリカにいた頃は自分でプログラム作ったり、研究したりしてたからさ。大学で」
サラッと彼の口から飛び出た「大学」という言葉に私は目を見張る。
つまり、今の話を要約すると佐藤くんは、私と同い年で海外の大学に通ってて。でも、今はなぜか日本に帰ってきて中学生として学校のサーバー監理を一任されてるってこと……?
にわかには信じられないような話ばかりで、私は頭を抱えてしまった。
「えーっと……。百歩譲ってここまでの佐藤くんの話をいったん信じるとして。私にボディーガードになってほしいっていうのはどういうこと?」
「……俺さ、昔からこのパソコン技術を買われて、結構危ない目にあってきてるんだ。アメリカでも何度か誘拐されかけたし。そういうわけで、あっちでは、本物のボディーガードを雇ってたんだけど。さすがに日本で似たようなことしたら目立ってしょうがないだろ?」
やれやれと肩を落とす佐藤くん。
たしかに彼の言う通り、日本でボディーガードを引き連れて歩いていたら何事かと騒ぎになりそうだ。
ましてや見た目が子どもだったらなおさら……。
「まぁ……たしかにそうだね」



