彼が何を考えているのかさっぱり分からず、私はジトッとした視線を向ける。
すると。
「あ、言っとくけど、別に君の秘密をバラすつもりはないよ?理由は知らないけど、武道大会で優勝したこと、君が強いこと、学校では隠してるんだろ?」
なんてあっけらかんと言うものだから、私は目をパチパチとしばたたかせた。
「本当に……?」
「それに、君の秘密がバレないように俺も協力してあげるよ。……ただ、その代わりと言ってはなんだけど、ちょっと頼みを聞いてほしいんだ」
まるで、天使のような純真無垢な笑顔。
でも、やっぱりその笑顔には何か裏が隠されているみたい。
つまりは、私の秘密を黙っている代わりに自分の願いを聞いてほしいってことでしょう?
「……その頼みって?」
警戒心を解かずに質問を返す私を綺麗な蜂蜜色の瞳が見つめている。
そして、その瞳がスッと細められた時、彼はゆっくりと口を開いた。
「それじゃ改めまして、遠城寺詩桜さん。俺の名前は佐藤蜜生。君に……俺のボディーガードになってほしいんだ」
ボ、ボディーガード……?
あまり聞き慣れない単語に、一瞬、何を言われたのかわからず思考が停止する。
ボディーガードって、よくドラマとか漫画とかで偉い人を護衛するスーツを着た人達のことよね?
必死に自分の中にあるボディーガードのイメージや知識を引っ張り出し、思考をまとめようとする私。
ん? というか、ちょっと待って! 今、自分のこと佐藤蜜生って言った!?
佐藤くんって、今日は体調不良で休んでるはずなんじゃ……。
ダメだ。情報量が多すぎて、処理しきれない。
「まぁ、急に色々言われたらさすがにビックリするか……。わかった。とりあえず、順を追って話すよ。ここじゃなんだし、奥の部屋に行こうか」
戸惑いを隠せない私に向かって、佐藤くんは真面目な口調でそう呟く。
それは先ほどまでの人をからかうような口調じゃなくて、真剣そのもの。本心なのだということが伺えた。
まずは、佐藤くんから事情を聞いてみないと話が先に進まなさそうね。
そう思った私は、コクリと小さく頷き、彼のあとに続いてパソコン室の奥にある部屋へと足を進めたのだった――。



