綺麗な顔……。
そこにいたのは1人の男子生徒。
身長は、170センチくらいだろうか。
サラッとしたハニーブラウンの綺麗なストレートの短髪に、日焼け知らずの透き通るように白い肌。
そして、髪の色と同じ明るい蜂蜜色の瞳。
少し気怠げな様子で、パソコン室の前にある教卓に頬杖をつき、ジッと私を見据える彼から視線が外せなかった。
「あなた……誰?」
ようやく出てきた言葉は、驚くくらい小さくて。
それだけで自分が緊張していることがわかる。
「人に名前を聞く時は自分から名乗らないと。ね、遠城寺詩桜さん」
……!?
形の良い唇から発せられた自分の名前に思わず、ピクリと肩がはねた。
この人、なんで私の名前を知ってるの……?
ぎょっとした私の様子が伝わったのか、ククッと意地悪そうに男子生徒は微笑む。
その小馬鹿にしたような表情に、思わずムッとしてしまった。
「私は、山内先生に頼まれて備品室に入学式で使った垂れ幕を片付けに来たの。そしたらこっちの部屋から物音が聞こえたから……」
「気になってのぞきに来たんだ?」
「だって、誰もいないはずの教室から物音がすれば気になるでしょ?最初は幽霊かとも思ったけど、どう考えても人の歩く足音だったし……」
「不審者かと思ったんだもん!」と最後の方はほぼ勢いにまかせてつっけんどんに言い放つ。
「ハハッ。不審者だと思ったら普通の女子は誰かに助けを求めるでしょ。やっぱり君、変わってる。……それとも、捕まえる自信があったのかな?空手、柔道、合気道で全国大会優勝した遠城寺さんは」
へ……?
さらに「あ、剣道もだっけ?」と付け加える彼に私は頭が真っ白になってしまった。
「な、なんでそのことを……」
予想外の展開にうろたえる私に対して、顔色ひとつ変えずに彼はニコリと素敵な笑みを浮かべる。
「まぁ、ちょっと調べればすぐわかることだしね。俺の得意分野なんだ。君の武道と同じだよ」
「……得意分野?」
「そう。調べるの得意なんだ、俺」
その瞬間、キラリと彼の蜂蜜色の瞳があやしく光った気がして、うっと言葉に詰まってしまった。



