シュガーくんの秘密のボディーガードちゃん


 だって、まさか旧校舎に行くことになるなんて思わなかったんだもん。

 安請け合いした10分前の自分を殴りたいくらいだ。

 せめて行き先を聞いてから判断するべきだ、と。

 薄暗い旧校舎の廊下は建物が古いせいか、少しの風でもガタガタっと音がする。

 その度に、ビクッと反応してしまう自分は思っていた以上に怖がりみたいだ。

 近づかなければいいと決めた矢先に、こんなことになるなんて今日は式辞の件といい、とことんツイてない。

「えっと……。備品室、備品室……。あ、ここだ」

 先生から頼まれた備品室は、3階の奥にあった。しかも、何の因果か私が人影らしきものを見たパソコン室の真横の部屋。

 ……早く片付けて帰ろう。

 ガラッと備品室の扉を開けると、やや埃っぽくて室内は普段、人が足を踏み入れていないことを物語っている。

 入り口付近の棚に、段ボール箱に入れてある垂れ幕等をそっと置いた、その時。

 ――ガタッ。スタスタ。

 隣のパソコン室の方から、何かの物音がして私はピタリとその場にこおりつく。

 や、やっぱり、誰かいる……!?

 気配をころすように、ピタリとその場に立ちつくした。

 心臓がドキドキと早鐘を打つのを感じながら、音を立てないように備品室を出た私は、パソコン室に向かってソロソロと近づく。

 幽霊に足があるのかはわからないが、私の経験上、さっきのは、ほぼ間違えなく人が歩く足音だと思う。

 生きた人間相手なら、なんとかなるはず!

 そんな根拠のない自信を胸に、私はパソコン室の入り口のガラス窓から中の様子をそっと伺った。

 室内は、備品室と同じく薄暗い。

 うーん、誰もいない……? え、でもあれって!?

 パソコン室の中には、奥にもう一つ部屋があり、そこの扉から光が漏れていることに気づいた。

 おそらくパソコン準備室かなにかだろう。

 でも、明かりがついているということは、確実に誰かいるようだ。私は意を決して、入り口の扉に手をかけた。

 シンと静まり返った室内を私は腰を低くして進む。

 よし……。もうちょっと……。

 そして、明かりのついている奥の部屋まで、あと数メートルというところまで来た時だった。

「ねぇ、さっきから何してんの?ここ、俺以外の生徒立ち入り禁止なんだけど」

 ビクッ。

 突然誰かに声をかけられ、一瞬、ひゅっと呼吸がとまりそうになる。

 嘘でしょ。今、全然気配感じなかったんですけど……。

 私に気配を悟らせないなんて、いったい誰なの?

 そんなことを考えながら、おそるおそる声のした方向を振り返った私は、その姿を視界で捉えた瞬間、言葉を失った。