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「詩桜お疲れ様!式辞ばっちりだったわよ」
「うんうん!詩桜ちゃん、上手だった〜」
初奈ちゃんと美春ちゃんに褒められ、私は、はにかみつつパイプ椅子を倉庫へと運ぶ。
入学式も終わり、私達は体育館で入学式の片付けをしていた。新入生はすでに退場しており、今は準備していたパイプ椅子や垂れ幕等を整理している最中だ。
「それにしても詩桜ちゃんって小柄なのに力強いよね。パイプ椅子一気に6脚も運んじゃうんだもん」
それぞれ両手に3脚ずつのパイプ椅子を持ち、素早く倉庫に運ぶ私を見て、美春ちゃんが感嘆の声をあげる。
ドキッ。
「え、えっと。昔から力持ちなの。ほら、うちのお父さんもめちゃくちゃ筋肉質だし!遺伝なのかも」
適当に誤魔化しつつ、私は苦笑いを浮かべた。
やはり昔から鍛えていたせいか、握力や腕力はそこらの同年代の女子よりはるかに強い。
武道のことは皆に秘密だし、今度からは変に思われないように、とりあえずパイプ椅子は片手に2脚ずつにしよーっと……。
そんな反省をしながら、美春ちゃんと他愛もない会話をしながら、椅子を片付けていた時。
「ちょっと遠城寺さん。口だけじゃなくて手を動かしてよ。帰りが遅くなるでしょ?」
「き、綺羅莉ちゃん。う、うん。早く片付けるね」
横をすれ違った際に、チクリと綺羅莉ちゃんに釘を差される。
また怒らせちゃったなぁ……。
綺羅莉ちゃんは今年は2組になったようで、クラスが違うから油断していた。実は今日の体育館の片付けは1、2組合同だったのだ。
「ちょっと香坂さん、それは聞き捨てならないけど。詩桜はあなたの倍くらい椅子運んでるのに、ちょっと話してたくらいで、文句言われる筋合いないんじゃない?」
近くでその様子をみていた初奈ちゃんが、納得いかないとでもいうように腕組みをして綺羅莉ちゃんの前に立ちはだかる。
「八神さんには関係ないでしょ。それに私は、当然のことを言っただけだけど?」
「そ、そうだよ。初奈ちゃん。喋ってた私が悪いから……」
バチバチと睨み合う2人に慌てた私がそんなフォローをいれたのとほぼ同時に。
「てか、詩桜ちゃんだけじゃなくて私も話してたんだし。むしろ私から声かけたんだもん。注意するなら私にもどうぞ〜?」
美春ちゃんまで……!?
普段、温厚な美春ちゃんが、少しトゲのある言い方をするものだから私は目をパチパチと瞬かせる。



