晩餐会は和やかに幕を閉じ、
再び代わり映えのない日常が戻ってきた。
エレオノールも元の地味王妃に戻ったが、
髪型だけはいつものハーフアップをやめて、
少しヘアアレンジを楽しむようになった。
エレオノールのヘアメイク担当の侍女が
実はヘアアレンジが好きだったようで
「離縁の日まで王妃様の御髪を綺麗にさせて欲しい」
と嘆願するので、
別に減るものでもないし、
侍女の自由にさせている。

しかし、
髪型を少し変えるだけでも
ずいぶん印象が変わるのだなぁというのは
新たな発見だった。
これからはもっと拘ってみても良いかもしれない。
今までは
髪をアップスタイルにすると
ただでさえ高い身長がますます強調されるので
なんとなく遠慮していたのだ。
でももう全てが吹っ切れた今となっては、
どうでも良いことだ。
せっかく手に入れた第二の人生は、
誰の目を気にすることなく
思うがままに楽しもうではないか。

離縁の日が迫っているというのに
悲しむどころか
むしろ活き活きしている王妃の姿は
王宮内にあらゆる噂を撒き散らした。
サロンを開いて社交に勤しむわけでもなく、
ドレスや宝石などのアクセサリーにも無関心な王妃は
王宮内で存在感がまるでなく、
今までは貴族たちの噂にのぼることすらなかった。