【エドリック視点】

「スカイフォルド軍から急報!リューネンシュタイン公国ならびにドレシア公国に続々とドラゴニア帝国軍が集まっているとのこと。」
そんな報せがアルドヴァール大公宮殿にもたらされたのは、
それから間もなくのことだった。

敵側の動きを空から見張ってくれていたのは、
レイザーク率いるスカイフォルド王国のドラゴンマスター達だ。
それを受けてアルドヴァール大公は進軍の命令を出す。
いよいよ戦いが始まるのだ。
士気を高める兵士たちの中に、
エドリックの姿があった。
彼はヴァリニア王国軍の中から選抜した
選りすぐりの部隊を引き連れて来ていた。
「あなたも行くの?」
兵士たちの中を縫うようにして
エドリックの元へたどり着いたエレオノールは
彼に声をかける。
「もちろん。私が交わした誓約の場にあなたもいただろう。私は行かなければならない。」
戦争の直前だというのにエドリックはいつもの涼し気な顔を崩すことはない。
「怖くないの?これは戦争なのよ。」
「この戦いはあなたの祖国を守る戦いだが、それと同時に私の国を守る戦いでもある。国王たる私には国を守る義務があるのだから、やらなければならない。」
「それはそうだけど・・・」
「私の自惚れかもしれないが・・・あなたは私を少しでも心配してくれていると捉えて良いのだろうか?」
突然話を逸らされてしまい、
エレオノールは答えに窮してまごついてしまった。
そんなエレオノールを見てエドリックはわずかに微笑むと、
「私が無事に帰ってきたら、労いの言葉をいただけると嬉しい。」
そう言い残して、
部下たちとともにドレシア公国を目指して出発していった。