その噂の1つが
『実は今までにもずっと不倫相手がいて、それを悟られないように地味で目立たないフリをしている』
というものだ。
真偽の程はどうでもよくて、
噂話が大好きな貴族たちの間を駆け巡り、
ついにはエドリックの耳にも入ってしまった。
あと3日で離縁の日という時に
エレオノールはエドリックに詰問されてしまう。

「ですから、私は陛下に顔向けできぬようなことは何一つしておりません。」
「だが、火のないところに煙は立たないと言うではないか。」
「それを立てるのが貴婦人たちの趣味なのですわ。それにどちらにせよ、あと3日で私たちは赤の他人になるのですからそんなくだらないゴシップなど聞き流してくださいませ。人のうわさも七十五日ですわよ。」 
「いや、私はあなたとは赤の他人になりたくない。」
身に覚えのないことについて聞かれて
イライラしていたエレオノールだが、
エドリックが思いも寄らないことを言い出すので
感情が追いつかない。
「はいっ!?」
「私はあなたにヴァリニア王妃の地位に、つまり私の妻に留まってもらいたい。」
結婚当初から思っていたことだたが、
エドリックは感情の起伏に乏しい。
(エレオノールから見れば)ほぼ無表情なので、
エドリックの意図がまるで分からなかった。