そして立ち上がりたいがどうしようか。
寝起きの無力に邪と装具が合わさり、力が入らない。
「おはようさん。」
「っ。」
いつの間に近くに来たのか、おーちゃんが瞬時に私を抱えカウンターに座らせてくれた。
「どうせカイのコーヒー飲むんやろ?」
「…飲む。」
「まだ大人しくしとき。」
「…ありがと?」
これにアキトは驚く。
そして意外にもトキも驚く。
「瞬兎…か。」
「初めて本物見た。」
なるほど。
私は最近おーちゃんの瞬間移動をずっと見ていたから目が慣れたのだろうけど。
二人はまだ見慣れてないから、最初の私と同じで目で追うのも難しいんだ。
「カイさんっ!」
慌ただしく、酒場のドアが開き。
カイの伝者の人が何かを伝えにやって来た。
「アレンデール軍勝利で戦終わったよ。」
ようやく、私の胸の蟠りが溶ける。
「流石鬼人やなあ。とりあえずもう少し追って。鬼人がアレンデールの国境跨いだら報告頼むわ。」
カイの言葉に頷き、伝者さんは去る。
「良かったな、お嬢。とりあえず鬼人が国境越えたらアレンデールに帰国しておいで。」
「…うん。」
「…元気出た?」
「…出た。」
ご心配おかけしました。
そう心を込めて、私は力が抜けた笑顔が漏れた。
「可愛えー…。」
「リン!祝い酒だ!飲むぞ!!!」
可愛いと悶えるカイも、酒を飲むと騒ぐアキトも、私はここは一度放置。
置いていたままにしていた地図に目を向ける。
勝利は勝利で嬉しいことだが、そこだけを考えてばかりもいられない。
「…援軍、結局何に使ったんだろ。」
「おいリン、酒!!!」
「もうアキトうるさい。勝手に飲めば。」
「お前仕事しろよ!!!」
「仕事?」
つまり、私がここで働いていると聞いてやって来たんだな。
「うちのお嬢は基本飲むのが仕事やから。妓女みたいなことはさせてへんねん。」
「はあ?やらせろよ?」
「そんなことしたら益々大繁盛やけど、客達の暴動起き兼ねへんし。」
「…確かに。」
カイに意味不明な納得をさせられたアキト。
しかし、酒を飲むことは諦めないそうで。カイからお酒も貰って結局飲み始めてしまった。
「リン、シオンから連絡来てない?」
「え?ないよ?」
「そっか。」
「シオンどうしたの?」
「連絡取れなくてさー。やっぱ何か気になるし、アキト俺もちょっと帰国して来てもいい?」
どうやら音信不通のシオンさん。
シオンがマメに連絡することの方が珍しいと思うんだけど、トキがこんなに心配している様子だから、たぶん何かあったんでしょう。
今はそこに考えを割く余裕はないので、トキに任せましょう。

