結婚が本当なら。
相手は美女で。理由は私がいない寂しさを埋めるためらしい。
私の心はそれを否定しているのに、世間がそれを否として私の耳を刺し続ける。
「……。」
「リンそろそろ帰るぞ。」
「…アキトお金持ってる?」
「お前俺を財布だと思ってねえか?」
ついでだし。
むしゃくしゃするし。お腹すいたし。さっきの本も買いたい。
「惚れた弱みも大変そうだな。」
「シオンてめえ…。」
「でも俺としても彼女を逃したくはないのに。どうにも嫌われ過ぎてる。」
「…お前リンをどうする気だよ。」
レンタルだよ!!!
私をレンタルしようとしてるのよこの人!!!
「エゼルタに亡命してもらおうと思ってる。」
私は繋いだままのアキトの手を握る力に、無意識にさらに力が入る。
つまり、火龍の力をエゼルタが所有したいと。
「んなこと俺も流石に黙ってねえけど?」
「アキトは黙らざるを得ない。この件でより黙らない厄介なのは流言の渦中の虎だけだ。」
また私が戦の引き金になり兼ねない。
これがシオン将軍のことが嫌いな一番の理由の一部だ。
そして、ハルのことを“虎”と表現したこの人の言葉を私は聞き逃した。
「アキト大丈夫だよ。私さえ奪わせなければ問題ないから。」
「…巻き込むなって釘刺したのに。シオンがこれじゃあ、難しい話だなあ。」
私は馬鹿ではない。
薄々は気付き始めている。
でもアキトは私にそれを話すつもりはないようなので、私も何も言わない。
話してくれても話してくれなくてもどっちでもいいけど、もし機会があれば直接本人の口から聞きたいと思う。
…だから早く帰ってきてね、トキ。

