あやめお嬢様はガンコ者

「なんと!」
「まあ!」

翌日の日曜日。
久瀬くんはフォーマルなスーツ姿で私の家にやって来た。
結婚の挨拶に来たと分かると、両親は驚いて目を見開く。

あ、ちなみに夕べは夕食を食べたあと、久瀬くんは有無を言わさず私を自宅まで送り届けた。

「泊まりたい!」と私が駄々をこねると、久瀬くんは心底困ったような顔で「どうしてこういう時だけ正直なの?」とため息をつき、必死に何かと戦っていた。

「ご両親にお許しをもらうまではダメだよ。でも結婚したらずっと離さないから」

そう言って私の口をキスで塞ぐ。
私はトロンとふやけた顔で頷いていた。

そして今日改めて、ピシッとした装いで両親に頭を下げてくれた。

「必ずあやめさんを生涯守り、幸せにいたします。どうか私をあやめさんと結婚させてください」

私も隣で頭を下げる。

「いやー、そうかいそうかい。どうぞどうぞ」
「ちょっと、お父様?軽すぎませんか?」
「だって嬉しくてな。久瀬くんがこのわがまま娘をもらってくれるなんて!なあ、母さん」
「本当に。もう女としての幸せは諦めなきゃいけないかと思ってたわ。あやめ、自暴自棄にならなくて良かったわね。これまでまったくモテなかったのも、久瀬さんに会う為だったのよ。運命よね、これは」
「お母様……。あんまりなセリフをそんな嬉しそうに」

とにかく良かった!と笑う両親に、まあいいかと私は久瀬くんと顔を見合わせる。
そのあとはご馳走を囲み、さちさんも混じってみんなでお祝いする。

そしてその次の週末に、私は久瀬くんの実家にご挨拶に行くことになった。