ーーーSide.久瀬---

驚いた。
あやめさんがあんな装いで職場に現れるなんて。
可愛らしい髪型にふわりと袖が揺れるブラウスと綺麗な色のスカート。
とにかく美しくて見とれてしまった。
仕事中も、ふと視界にあやめさんを捉えるたびにドキリとする。
気を抜けばニヤニヤしてしまいそうだった。

だが昼休みにカフェテリアに行くと、無性に焦りを感じた。
色んな人があやめさんに釘付けになっている。
「今日のあやめさん、可愛いー」と言う男性社員の声が何度か聞こえてきて、心の中で(見るんじゃなーい!)と叫んだ。

これはマズイ。
あやめさんに言い寄られたらどうしよう。
俺は時間をかけてあやめさんの気持ちを待つつもりだったが、これではおちおちしていられない。
綺麗なあやめさんを見られるのは嬉しいが、職場ではやめてほしい。
そう思っていると、次の日はいつものあやめさんに戻っていた。
ホッとしつつ、あの綺麗なあやめさんにも会いたいと矛盾した気持ちになる。

(どっちがいいんだ?いや、職場ではいつものあやめさんで、俺の前でだけあの服装をしてほしい。って、彼氏でもないのにな。あー、こうなったら猛アタックするか?)

悶々としていると、あやめさんがふと俺を見て首を傾げる。

「久瀬くん?どうかしました?」
「え?あ、いえ。すみません」

慌てて顔を伏せた。

やっぱり俺、あやめさんが好きだ。
どうしようもないほど。

今は仕事も大事な局面だが、一段落ついたら少しは息抜き出来るだろう。
その時に改めて想いを伝えよう。
その為にも今は仕事に集中しなければ。
俺は自分に気合いを入れた。