あやめお嬢様はガンコ者

「おはようございます。えっ、あやめさん?」

月曜になり、出社した久瀬くんは私を見て驚く。

「えっと、おはようございます、久瀬くん」

私は気まずさにうつむいて、小さく挨拶した。
由香里ちゃんに「着て来てくださいね!」と釘を刺されて、今日の私の装いは由香里ちゃんが選んでくれたオフィススタイル。
袖が花びらのように何層も重なった白のブラウスに、ラベンダー色のフレアスカート。
肩下までの黒髪の毛先を巻いて、ローポニーテールにしていた。

チラリと久瀬くんの様子をうかがうと、じっと私を見たまま固まっている。

「あの、やっぱり変ですか?」
「え、いえ!とんでもない」

慌てて否定する久瀬くんに、気を遣わせてしまったかなと不安になる。

その時「おはようございます!」と由香里ちゃんが原口くんと一緒に現れた。

「きゃー、あやめさん、素敵!遂にオフィスで私の夢見たあやめさんに会えたー!ね?綺麗でしょ?あやめさん」

由香里ちゃんが原口くんを振り仰ぐと、原口くんも笑顔で頷いた。

「本当に。美しさに磨きがかかりましたね、あやめさん」
「いえ、あの。仕事をするのにこの服装はどうかと思うのですが……」

すると他のメンバーも続々と出社してきて、口々に私の服装を褒めてくれる。
気恥ずかしさに、仕事に没頭することにした。

「あやめさーん。お昼行きましょ!」
「うん、ちょっと待ってね」

パソコンを閉じてバッグを持ち、由香里ちゃんと一緒にカフェテリアに向かう。
そこでも注目を集めて、私は居心地の悪さにのんびり食事を楽しめなかった。

「由香里ちゃん、なんだか悪目立ちしてていたたまれないんだけど」
「ふふっ、みんなあやめさんの美しさに見とれちゃってますよね。あやめさん、モテちゃいますよー」
「そんなこと……」

周りの視線が気になり、私は食事を終えるとすぐにオフィスに戻った。