「それでは久瀬くん、今日もお疲れ様」
「ありがとうございます。いただきます」
広間のソファに向かい合って座り、俺は社長と日本酒を味わう。
さちさんが用意してくれた小皿料理は、どれもこれも美味しかった。
「今夜の食事は、新部署のメンバーとだったのかい?」
「はい。あやめさんと私、東と原口さんの四人です」
「そうか。なかなか良いメンバーだし、これからも期待しているよ」
「ありがとうございます。互いに信頼し合える仲ですので、皆で力を合わせて取り組んでまいります」
「ところで、久瀬くん。あやめと二人で会ったりしてるの?」
え?と、社長の思わぬ言葉に俺は顔を上げた。
「あやめさんと二人で、ですか?それは新部署の部長同士として、ということでしょうか」
「いや、プライベートでだよ。お見合い相手として」
「は!?いえ、その」
お見合いの話はすっかり失念していたと、俺は気まずさにうつむく。
「あやめに聞いてみたくても、マンションを引き揚げて来てから今までずっとへそを曲げたままでね。ろくに会話もしておらんのだよ。まったく、なぜあんなにもガンコなのやら」
思わず頷きそうになり、慌ててこらえた。
「だから久瀬くんに聞いてみたくてね。どうかな?二人でデートには行ったりしてるのかい?」
「いえ、そのようなことは……。今はお互い仕事に集中していますので」
「まあ、大事な時だとは思うよ。だけどそうやって毎日仕事に取り組んでいく中で、二人の絆が固くなったりしないのかい?」
「その、仕事中は頭の中を切り替えておりますので、お互いなかなかそういった感情にはならず……」
「案外真面目なんだね、今どきの若い子って」
は?と俺は社長の意外な口ぶりに驚く。
「私が君くらいの時は、社内に可愛い子がいればついつい目が行ってしまったけどね」
「あ、左様でございますか」
突然の爆弾発言に、俺は挙動不審になる。
「ははは!そんなに驚くことかい?秘書課に可愛い子がいてね。ぜひ私について欲しいとお願いしたんだよ。彼女と一緒に仕事をする毎日はとても楽しくて、会社に行くのがちっとも嫌じゃなかったな」
「そ、それはよろしゅう、ございました」
こんな話を誰かに聞かれては大変だとソワソワしていると、社長はさらにおかしそうに笑った。
「心配いらないよ、この話はみんな知っている」
「そ、そうなのですか?」
「ああ。なにせ私と妻の馴れ初めだからね」
「は?……ああ!そういうことでしたか」
俺はホッとして胸をなで下ろす。
「社内恋愛はいいぞ。俄然やる気が湧いてくる。かっこいいところを見せたくてね。まあ、久瀬くんなら普段からモテるだろうけど。あやめもおちおちしてはいられんな」
「いえ、とんでもない」
否定してから、俺は気になっていたことを聞いてみた。
「ありがとうございます。いただきます」
広間のソファに向かい合って座り、俺は社長と日本酒を味わう。
さちさんが用意してくれた小皿料理は、どれもこれも美味しかった。
「今夜の食事は、新部署のメンバーとだったのかい?」
「はい。あやめさんと私、東と原口さんの四人です」
「そうか。なかなか良いメンバーだし、これからも期待しているよ」
「ありがとうございます。互いに信頼し合える仲ですので、皆で力を合わせて取り組んでまいります」
「ところで、久瀬くん。あやめと二人で会ったりしてるの?」
え?と、社長の思わぬ言葉に俺は顔を上げた。
「あやめさんと二人で、ですか?それは新部署の部長同士として、ということでしょうか」
「いや、プライベートでだよ。お見合い相手として」
「は!?いえ、その」
お見合いの話はすっかり失念していたと、俺は気まずさにうつむく。
「あやめに聞いてみたくても、マンションを引き揚げて来てから今までずっとへそを曲げたままでね。ろくに会話もしておらんのだよ。まったく、なぜあんなにもガンコなのやら」
思わず頷きそうになり、慌ててこらえた。
「だから久瀬くんに聞いてみたくてね。どうかな?二人でデートには行ったりしてるのかい?」
「いえ、そのようなことは……。今はお互い仕事に集中していますので」
「まあ、大事な時だとは思うよ。だけどそうやって毎日仕事に取り組んでいく中で、二人の絆が固くなったりしないのかい?」
「その、仕事中は頭の中を切り替えておりますので、お互いなかなかそういった感情にはならず……」
「案外真面目なんだね、今どきの若い子って」
は?と俺は社長の意外な口ぶりに驚く。
「私が君くらいの時は、社内に可愛い子がいればついつい目が行ってしまったけどね」
「あ、左様でございますか」
突然の爆弾発言に、俺は挙動不審になる。
「ははは!そんなに驚くことかい?秘書課に可愛い子がいてね。ぜひ私について欲しいとお願いしたんだよ。彼女と一緒に仕事をする毎日はとても楽しくて、会社に行くのがちっとも嫌じゃなかったな」
「そ、それはよろしゅう、ございました」
こんな話を誰かに聞かれては大変だとソワソワしていると、社長はさらにおかしそうに笑った。
「心配いらないよ、この話はみんな知っている」
「そ、そうなのですか?」
「ああ。なにせ私と妻の馴れ初めだからね」
「は?……ああ!そういうことでしたか」
俺はホッとして胸をなで下ろす。
「社内恋愛はいいぞ。俄然やる気が湧いてくる。かっこいいところを見せたくてね。まあ、久瀬くんなら普段からモテるだろうけど。あやめもおちおちしてはいられんな」
「いえ、とんでもない」
否定してから、俺は気になっていたことを聞いてみた。



