「どうぞ。狭い所ですけど」
「いいえ、お邪魔いたします」
あやめさんは玄関で脱いだ靴を揃えると、俺の後ろをついて部屋に上がる。
少し緊張した面持ちで、控えめに部屋の様子をうかがう仕草が可愛らしい。
きっと、ここが男の人の部屋かあ、なんて思っているのだろうな。
大して目新しいものはない、ごく普通の男のひとり暮らしの部屋だが。
「あやめさん、ソファに座っていてください。今紅茶を淹れますから」
「はい、どうぞお構いなく」
ちょこんとソファの端に腰を下ろし、見てはいけないものを見てしまう、といった様子でちらりと辺りに目をやっている。
俺はそんなあやめさんに口元を緩めつつ紅茶を淹れてから、寝室でオーダーメイドのスーツに着替えた。
今日のあやめさんはネイビーのワンピースだったと思い出し、似た色のネクタイを選ぶ。
洗面所で身支度を整えると、鏡の中の自分に気合いを入れるように頷いた。
これからあやめさんと社長に話をしなければならない。
あの男の不審な動きに気づいていながら、誰にも相談しなかったことは完全な俺の落ち度だった。
どんなお叱りも受け入れる覚悟だ。
そしてあの男には、然るべき制裁が下されなければ。
そこは全て社長に任せるつもりだった。
大きく息を吸って気持ちを落ち着かせると、俺はリビングに戻ってあやめさんに声をかける。
「そろそろ行きましょうか」
「はい」
あやめさんは立ち上がるとティーカップをキッチンに運び、洗い始めた。
「いいですよ、そのまま置いておいてください」
「すぐ終わりますから」
綺麗に洗って拭いてから、カップボードにしまってくれる。
「ありがとうございます、あやめさん」
「こちらこそ。それでは参りましょうか」
「はい。今、タクシーを呼びますね」
「え?電車で行かないのですか?」
「当然です。お嬢様を徒歩で連れて帰るなんて、あり得ませんから」
「そんな。私はいつも駅から歩いて帰ってますから、大丈夫です」
あやめさんの言葉は聞き流し、俺はタクシーを手配して二人でエントランスに下りた。
「いいえ、お邪魔いたします」
あやめさんは玄関で脱いだ靴を揃えると、俺の後ろをついて部屋に上がる。
少し緊張した面持ちで、控えめに部屋の様子をうかがう仕草が可愛らしい。
きっと、ここが男の人の部屋かあ、なんて思っているのだろうな。
大して目新しいものはない、ごく普通の男のひとり暮らしの部屋だが。
「あやめさん、ソファに座っていてください。今紅茶を淹れますから」
「はい、どうぞお構いなく」
ちょこんとソファの端に腰を下ろし、見てはいけないものを見てしまう、といった様子でちらりと辺りに目をやっている。
俺はそんなあやめさんに口元を緩めつつ紅茶を淹れてから、寝室でオーダーメイドのスーツに着替えた。
今日のあやめさんはネイビーのワンピースだったと思い出し、似た色のネクタイを選ぶ。
洗面所で身支度を整えると、鏡の中の自分に気合いを入れるように頷いた。
これからあやめさんと社長に話をしなければならない。
あの男の不審な動きに気づいていながら、誰にも相談しなかったことは完全な俺の落ち度だった。
どんなお叱りも受け入れる覚悟だ。
そしてあの男には、然るべき制裁が下されなければ。
そこは全て社長に任せるつもりだった。
大きく息を吸って気持ちを落ち着かせると、俺はリビングに戻ってあやめさんに声をかける。
「そろそろ行きましょうか」
「はい」
あやめさんは立ち上がるとティーカップをキッチンに運び、洗い始めた。
「いいですよ、そのまま置いておいてください」
「すぐ終わりますから」
綺麗に洗って拭いてから、カップボードにしまってくれる。
「ありがとうございます、あやめさん」
「こちらこそ。それでは参りましょうか」
「はい。今、タクシーを呼びますね」
「え?電車で行かないのですか?」
「当然です。お嬢様を徒歩で連れて帰るなんて、あり得ませんから」
「そんな。私はいつも駅から歩いて帰ってますから、大丈夫です」
あやめさんの言葉は聞き流し、俺はタクシーを手配して二人でエントランスに下りた。



