キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

あとは母さんのこと。
母さんはずっと体が弱くて、心も弱くて、でも父さんに出会い少しずつ変わっていった。
そして、ずっと小夏たちのことを心配していたよ。
だけど、ある日、酷い言葉を言ってしまったと。
今も自分を酷く責め続けています。

それが僕はどんな言葉か知らないけれど、本心からの言葉じゃないと知っていてあげてください。
人は誰しも弱さを持って、産まれてくるのだから。
僕は捨てられた子だったけれど、母さんに出会えて、幸せでした。その弱ささえ、愛おしく思ったから。
小夏も、いつかでいい、分かってあげてください。
母さんは命をかけて君と小春を産みました。
それを僕だけは知っているから。
小夏はね、ずっと始めから祝福に満ちていたんだ。
生まれてきてくれてありがとうってみんなが思って、みんなから望まれて生まれてきたんだよ。

「お母さん……」
「小夏、生まれてきてくれて、ありがとう」

そして僕のこと。
僕の脳には腫瘍がありました。
それを手術して取ったことでこうして今生きているわけだけど、代償として母さんのようなバイオリニストになる人生を失いました。

出来れば、小夏にはこんな思いはして欲しくないと思っていた。
病気で何かを諦めるような人生は。
喘息の調子が悪くなっていることに気が付いても、それを止めることもまた出来なかった。

だって、僕たちは、音楽家だろう?
一度舞台に立つ喜びを知ってしまったら戻れないことを知っていたから。

きっと、小夏にもいつか僕のように戻れない岐路が訪れることに気が付いて居ながら、君を愛し、君を置いていった勝手な僕を許してくれとは言わない。
だから、せめて君より少しだけ長生きした分、感じた大事なことを言うよ。

小夏、失うことに慣れなさい。
きっともう君の呼吸機能は戻らない。
かつてあったであろう、満足のいく歌声も戻ってこない。
この先、どんなに晴や佳史が手を尽くしても。
だからこそ、いま目の前にあるものを大切にするんだ。

そしてーー失ったものには、きちんとサヨナラを言わなくちゃね。
向き合って向き合って泣いて泣きまくって、それで感謝とお別れをするんだよ。

そうしたら、その先には、必ず新しい希望が湧いてくる。
僕はそう信じている。

小夏なら、もうこの話の意味をきっと解ってくれるはずだよね?

「……うん。いまなら解るよ。冬夜」
「小夏!!」

すみちゃんが駆け寄ってきて私を抱きしめる。

「すみちゃん、私はもう大丈夫。ずっと親友だから。約束したから」
「うん…うん!! 目が覚めてよかったーー」