東条先生とゆかさんは舞台の袖で、私に何かあった時のためにずっと見守ってくれていた。
「先生、小夏ちゃんたちすごく頑張ってますね」
「そうだね。今の小夏ちゃんはもう一人じゃない。晴やみんなが居る。初めて会った時からどんどん瞳に光が満ちていって、彼女は歌手として人として、もはや病気にも邪魔されずに輝いていくよ。そうやって、いつかはみんな翼を広げ飛び立っていくんだよ」
「そうですよね、なんかちょっとだけ寂しいな。あの小さかった小夏ちゃんが」
「俺たち大人も見習わなくちゃね」
「ひたむきな気持ちを忘れないでと言うなら、私も結構先生に一生懸命伝えているつもりなんですけどね」
途端に黙り込む東条先生。
強い瞳で見つめ返すゆかさん。
東条先生は少し泣きそうに、困ったように笑う。
「高瀬さん。俺はずっと茜さんが好きなことを知っているだろう」
「知っています。茜さんがいたから、先生が医者になったことも。でも明日には分からないから。私は先生を想い続けます」
「後悔するかもしれないよ」
「どんな後悔ですか? 私は先生を見ていて、先生の意思を継いだ諏訪野先生を見ていて、幸せな時間しか知りません」
「ありがとう。君の想いを受け取れることを幸せに思うよ。今はまだその心を全て返すことはできないけど。俺は……」
「いいんです……! だから傍にいてもいいですか。これからはもっと話しかけてもいいですか。先生のこと、知りたいと思っても……いいですか?」
東条先生はまた困ったように笑って、そしてゆかさんの手をとった。
「よろしく……お願いします」
未来なんて分からなくて、進むことが怖くて。
だけど変わっていく世界に、取り残されてしまうことも怖い。
私は、私でいたい。
まだ君がいない世界に慣れなくて身体は冷たいけれど、私はもう温もりを知っているから。
君のいない時間を進んでいける。
「皆さん!! ひまわりを聴いてくれて、ありがとうございます。夏は好きですか? この夏は皆さんにとってどんな夏でしたか? 私はすごくすごく幸せな夏でした。悲しいことも沢山あったけど、私にとっては全部宝物みたいにキラキラ輝いてた。いまこうしてみんなが振ってくれるペンライトみたいに!」
揺れる光たちに、ありがとう!! と手を振り応える。
「次は秋の歌を歌います。タイトルは《茜空》。秋は少しセンチメンタルになったり、お月見してお団子がおいしかったり……」
「そこで食べ物のことー? お姉ちゃん! 歌手としてイメージが(笑)」
「えっ!? コレだめだったんだー。でも家族でしたお月見、楽しかったよね?」
「それはまぁそうだけど」
「みんなの周りにも大切な人はいて、秋にはきっとたくさんの思い出があると思うから。この曲は私の大切な人たちみんなと奏でたくて。みんなで届けます」
すると、会場がザワついてくる。
Spicaの曲がBGMとして流れ始めたのだ。
「ゆかさん。じゃあ行ってくるね」
「はい、佳史さん。沢山輝いてきてください」
「こらこらイチャイチャすんなよ、佳史」
そこで現れる2人の人影。
「……はァ瞬たちだって。しょっちゅうデートしてんだろ。もういい歳してるのに。晴に呆れられない程度にしろよ」
「あら、ヨッシー。ゆかさんにあることないこと吹き込むわよ」
「うわ。光さんには敵わないなぁ。とにかくみんなの思いを繋いでSpica、また輝きだそう!!」
Spicaの3人が登場して演奏を始めると、会場がまた一段と湧いた。
もちろん彼らを知らない人もいるけれど、不思議な力を持った音楽に引き寄せられるようにみな心がひとつになったようだった。
「私のお父さんはSpicaというグループのボーカルでした。事故で居なくなっちゃったけど、それを私のせいだと責めたりもしたけれど。私の中に、私の音楽の中に、いつもお父さんがいます。お父さんがいて、私がいたから、こうしてみんながまた集まってくれました。お母さんも今日はここに居ないけど、いつも私をこの空のように見守ってくれています。
だから茜空はそんな大切な人を思い浮かべながら聴いてくれると嬉しいな。みんなの大切な人たちがどうか、いつも元気で幸せでありますように」
「先生、小夏ちゃんたちすごく頑張ってますね」
「そうだね。今の小夏ちゃんはもう一人じゃない。晴やみんなが居る。初めて会った時からどんどん瞳に光が満ちていって、彼女は歌手として人として、もはや病気にも邪魔されずに輝いていくよ。そうやって、いつかはみんな翼を広げ飛び立っていくんだよ」
「そうですよね、なんかちょっとだけ寂しいな。あの小さかった小夏ちゃんが」
「俺たち大人も見習わなくちゃね」
「ひたむきな気持ちを忘れないでと言うなら、私も結構先生に一生懸命伝えているつもりなんですけどね」
途端に黙り込む東条先生。
強い瞳で見つめ返すゆかさん。
東条先生は少し泣きそうに、困ったように笑う。
「高瀬さん。俺はずっと茜さんが好きなことを知っているだろう」
「知っています。茜さんがいたから、先生が医者になったことも。でも明日には分からないから。私は先生を想い続けます」
「後悔するかもしれないよ」
「どんな後悔ですか? 私は先生を見ていて、先生の意思を継いだ諏訪野先生を見ていて、幸せな時間しか知りません」
「ありがとう。君の想いを受け取れることを幸せに思うよ。今はまだその心を全て返すことはできないけど。俺は……」
「いいんです……! だから傍にいてもいいですか。これからはもっと話しかけてもいいですか。先生のこと、知りたいと思っても……いいですか?」
東条先生はまた困ったように笑って、そしてゆかさんの手をとった。
「よろしく……お願いします」
未来なんて分からなくて、進むことが怖くて。
だけど変わっていく世界に、取り残されてしまうことも怖い。
私は、私でいたい。
まだ君がいない世界に慣れなくて身体は冷たいけれど、私はもう温もりを知っているから。
君のいない時間を進んでいける。
「皆さん!! ひまわりを聴いてくれて、ありがとうございます。夏は好きですか? この夏は皆さんにとってどんな夏でしたか? 私はすごくすごく幸せな夏でした。悲しいことも沢山あったけど、私にとっては全部宝物みたいにキラキラ輝いてた。いまこうしてみんなが振ってくれるペンライトみたいに!」
揺れる光たちに、ありがとう!! と手を振り応える。
「次は秋の歌を歌います。タイトルは《茜空》。秋は少しセンチメンタルになったり、お月見してお団子がおいしかったり……」
「そこで食べ物のことー? お姉ちゃん! 歌手としてイメージが(笑)」
「えっ!? コレだめだったんだー。でも家族でしたお月見、楽しかったよね?」
「それはまぁそうだけど」
「みんなの周りにも大切な人はいて、秋にはきっとたくさんの思い出があると思うから。この曲は私の大切な人たちみんなと奏でたくて。みんなで届けます」
すると、会場がザワついてくる。
Spicaの曲がBGMとして流れ始めたのだ。
「ゆかさん。じゃあ行ってくるね」
「はい、佳史さん。沢山輝いてきてください」
「こらこらイチャイチャすんなよ、佳史」
そこで現れる2人の人影。
「……はァ瞬たちだって。しょっちゅうデートしてんだろ。もういい歳してるのに。晴に呆れられない程度にしろよ」
「あら、ヨッシー。ゆかさんにあることないこと吹き込むわよ」
「うわ。光さんには敵わないなぁ。とにかくみんなの思いを繋いでSpica、また輝きだそう!!」
Spicaの3人が登場して演奏を始めると、会場がまた一段と湧いた。
もちろん彼らを知らない人もいるけれど、不思議な力を持った音楽に引き寄せられるようにみな心がひとつになったようだった。
「私のお父さんはSpicaというグループのボーカルでした。事故で居なくなっちゃったけど、それを私のせいだと責めたりもしたけれど。私の中に、私の音楽の中に、いつもお父さんがいます。お父さんがいて、私がいたから、こうしてみんながまた集まってくれました。お母さんも今日はここに居ないけど、いつも私をこの空のように見守ってくれています。
だから茜空はそんな大切な人を思い浮かべながら聴いてくれると嬉しいな。みんなの大切な人たちがどうか、いつも元気で幸せでありますように」


