キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

私たちは宣言通り、屋根の上に上がる。
体育座りみたいにして落ちないように2人で手をつなぎながら座った。
草のざわざわと風に揺れる音と虫の鳴き声だけが響いていた。
星灯りが眩しくて、周りは明るすぎるくらいだったけど。

「まるで世界の果てみたいな場所だね」
「そうでしょう? 冬はね、もっと空気が澄んですごいんだよ。あそこにシリウス、プロキオン、ペテルギウス」
「冬の大三角だ」
「晴とまた見に来たいなぁ。ねぇ、晴。私のために全部やれること、やってくれてるんだよね。それはさ、きっと晴なりの贖罪なんだよね」
「そんな聞こえのいいことを言わないでくれ。僕は小夏から夢を奪い取った人間だよ。明日が終わったあとの大事な未来を。ごめんね」
「ううん、私はもう、怖くないから。なんにもない私でも、歌えない私でも晴が愛してくれるから」

私は晴と握られた手をさらに強く握った。

「ずっとずっと伝えたかった。小夏は頑張った。すごくすごく頑張った。だからもう1人で全部背負って苦しまないで」
「うん……うん……ずっと。私が手紙に書いてたこと、本当は言葉なんていらなくて。いつもそうやって伝えてくれようとしてたよね」
「もうbihukaじゃなくていい。これからは特別な女の子なんかじゃなくていいよ。小夏が小夏でいてくれればいいんだ……!」

晴は私を抱きしめてくれた。
泣いてるのが解った。
何でだろう。
晴が泣いているのにこんなに嬉しいの。

「いつか体がもう少し良くなったら、小夏がしたいこと一緒に全部やろう。新しい宝物を見つけにいこう? そしてそのとき僕を必要としてくれるなら、僕と結婚してほしい」
「ありがとう、私を普通の女の子として見てくれて」
「小夏ははじめから普通の女の子だったよ。だから僕は君を守りたいと思ったんだ」

何も言わずに、唇を重ねた。
大好きな晴、愛しくてたまらない。

「今度こそ、諏訪野小夏になってよーー」

これから先も永遠にこうして、晴に支えられて甘えていたい。
普通の女の子として。
晴のそばでゆっくりと穏やかな時を過ごしていく。
そんな日々も絶対に悪くない。
けれどーー
私はゆっくりと離れ、その揺れる瞳を見つめて伝える。

「ーー晴、ごめんね」