夜の7時を過ぎた頃、晴がまた病室へにやって来た。
ゆかさんのアドバイスを受け、少し眠り夕食もとり、私は気持ちを立て直すことが出来た。
でもまだ晴の前でだけはどうしても素直になれなくて、そっぽを向いてしまう。
「小夏、今日の昼は随分ご立腹だったな。診察するぞ」
「うん⋯⋯」
でも治療をちゃんと受けるのは約束だから。黙って受け入れる。
「小夏、なんで目をそらす?」
「私にだってさ、秘密にしたいことのひとつやふたつある」
「小夏の場合、それが多すぎて大き過ぎていつも一人で抱えきれなくてズッコケて倒れるんだけどね」
「うるさいっ!」
ポコッとグーで晴を叩こうとすると、そのまま拳を晴の大きな手で包み込まれてしまう。
「やっとこっちを見た⋯⋯。で、どうしたの?」
「だからもう秘密だって」
「確かに恋人だからっていつでも近くにいてなんでも共有する必要はないと僕も思う。けど今は入院中の患者でもある。医者としても今日の態度は見過ごせないよ。何を焦ってる?」
晴が確信をついた質問をしてくるけれど、私はどうしても全部は話したくなくて下を向いた。
勿論、体力がなくなっていたことはショックだったけど。
そうじゃなくて、私、あと数日でデートの日が来る前にちょっとだけ外に出てやりたいことがあったんだ。
「言いたくない⋯⋯」
「強情だね。小夏らしいと言えばそうだけど。今日倒れて体力のことを心配してるなら大丈夫だよ。明日からはリハビリの予約もしてるから。小夏は若いしきっと間に合う」
「うん⋯⋯」
「僕も付き添うから」
私が黙ったままでいると、ふうと息を吐いて晴は腰に手を当てたまま困った顔をしていた。
私の言葉を待ってるのは分かってる。
本音だったり、ポジティブな言葉を吐けばいいんでしょ?
でも今は上手くできない。
「じゃあ、また明日の朝に来るから」
晴は何かを察したように、病室を出ていった。
よし、今しかないと私は思った。
ゆかさんのアドバイスを受け、少し眠り夕食もとり、私は気持ちを立て直すことが出来た。
でもまだ晴の前でだけはどうしても素直になれなくて、そっぽを向いてしまう。
「小夏、今日の昼は随分ご立腹だったな。診察するぞ」
「うん⋯⋯」
でも治療をちゃんと受けるのは約束だから。黙って受け入れる。
「小夏、なんで目をそらす?」
「私にだってさ、秘密にしたいことのひとつやふたつある」
「小夏の場合、それが多すぎて大き過ぎていつも一人で抱えきれなくてズッコケて倒れるんだけどね」
「うるさいっ!」
ポコッとグーで晴を叩こうとすると、そのまま拳を晴の大きな手で包み込まれてしまう。
「やっとこっちを見た⋯⋯。で、どうしたの?」
「だからもう秘密だって」
「確かに恋人だからっていつでも近くにいてなんでも共有する必要はないと僕も思う。けど今は入院中の患者でもある。医者としても今日の態度は見過ごせないよ。何を焦ってる?」
晴が確信をついた質問をしてくるけれど、私はどうしても全部は話したくなくて下を向いた。
勿論、体力がなくなっていたことはショックだったけど。
そうじゃなくて、私、あと数日でデートの日が来る前にちょっとだけ外に出てやりたいことがあったんだ。
「言いたくない⋯⋯」
「強情だね。小夏らしいと言えばそうだけど。今日倒れて体力のことを心配してるなら大丈夫だよ。明日からはリハビリの予約もしてるから。小夏は若いしきっと間に合う」
「うん⋯⋯」
「僕も付き添うから」
私が黙ったままでいると、ふうと息を吐いて晴は腰に手を当てたまま困った顔をしていた。
私の言葉を待ってるのは分かってる。
本音だったり、ポジティブな言葉を吐けばいいんでしょ?
でも今は上手くできない。
「じゃあ、また明日の朝に来るから」
晴は何かを察したように、病室を出ていった。
よし、今しかないと私は思った。


