キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

ラストライブのリハーサルは、もちろん出来たばかりのエソランドームで行われる。
客席の多さも音響や照明機材も、全てのものが段違いだった。ここに約3万人もの人が来てくれる。私たちbihukaの最後のライブを見届けるために。

ステージの上に立ち、まわりを見渡しながらbihukaは、私たちは手を繋ぎ、幸せをかみ締めていた。

「小春。私たちはじめは2人きりで始めたことだったのに。ついにここまで来たんだね」
「そうだね。お姉ちゃんがここまで連れてきてくれた」
「ううん。小春がいたから、みんなが居たから」
「お姉ちゃん、私、辛くて悲しいことや悔しいことも沢山あった。でも全部が楽しかったよ。1つだって忘れたいと思うことはないから。一緒に、最後まで頑張ろうね」
「うん。私たちは2人でbihuka。たくさんの仲間が増えたとしても、私たちの歌だけは、この始まりは、永遠に変わらない」
「お姉ちゃん、これからもずっと大好きだよ」
「私も」

2人で、手を重ね合わせた。
小さなぬくもりが体全体にいきわたる。
消えないように、いつかまたつながりますように。

「こらこらさっきまで喧嘩してたと思ったら、今度はイチャイチャすんなー。うち、いたたまれないじゃん」
「えーすみちゃんもこっちきて!」
「そうだよー」
「ふん、別にいいもんうちには麦いるし」
「私も仲良しだよ?」
「分かってる。小夏はうちが居ないとダメなんだから」
「そうだよ。ずっとお姉ちゃんの世話してあげて」
「小春もね」
「よろしく〜〜! じゃあ数学教えて」
「数学だけは、ほんとに無理」

すみちゃんとも手を重ねて、三人目。

「なんか若い子ばっかりで眩しいんだけどな」
「高瀬さんも充分お綺麗ですよ」
「東条先生って昔から変わんない! その歯が浮くようなセリフをサラッと言うとこ。そんなだから独身なんですよ」
「高瀬さんには言われたくないかなぁ……」
「こらこら、大人チームはせめて大人しくしててくださいよ。ほら、こっちでみんなで手を出して」

ゆかさんと東条先生たち、そしてバンドメンバーたち、スタッフみんなが加わりたくさん手が重なり合う。

「晴も! 早く!!」
「はいはい、今行くよ」

そして、晴がいる。
すみちゃんの作った衣装をまとって、伸びた背筋。
珍しくコンタクトレンズで。
そして、冬夜のバイオリンを持って。
一緒に舞台に上がってくれる。

「一生に一度しかできないかけがえのないライブにしましょう!! さて。ねぇ晴」
「ん?」
「最後に何か言って?」
「え、僕でいいの?」

そこで皆から笑いがこぼれた。
よーし、と晴は空を見上げてから、なにか吹っ切れたように笑った。

【みんな全力だ!! みんなで駆け抜けよう!!! 】
【おぉー!!!】

晴らしくない挨拶にみんなは少し驚きながらも声を重ねた。