その時、どこかでまた花火が上がった。
あの時よりもずっと近くで。
びっくりするくらいお腹に響くような音がして。
それでもその響きさえも心地よかった。
「小夏。せっかくの花火ゆっくり見て欲しいから、一旦車椅子に座って」
「うん。ありがとう」
晴はゆっくりと私を抱き抱えて、車椅子に戻してくれる。
酸素をつけ直し、脈をとりバイタルを確認すると笑顔で大丈夫だというように頷いた。
「花火、また見れたね」
「そうだね」
「全身で音を感じるね」
「音楽みたいだね」
「ほんとに、あ!」
「ラストライブでの花火は僕が許可しないからね」
ちぇって言うと、笑った春。
花火の音が大きいし私は上手くまだ声が出せないから、耳を近くに寄せて話を聞いてくれる晴が愛しくて、私は晴の髪を撫でた。
「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た」
「それにこの汽車石炭をたいていないねえ」
私はまるでカンパネルラになったような気持ちで晴に話すと、すぐに続きのセリフを晴は言った。
「あ、すごい。晴。読んでるんだ」
「『銀河鉄道の夜』は読んだことあるよ。もちろんあの時の『星の王子さま』も」
「ねぇ晴、やっぱり好きな人と離れちゃうのは寂しいね」
「自分の存在価値を誰かの心の中に強く焼き付けて消えていけるなら、僕も消えてしまいたい。陽菜のことでそんな風に思ったこともあるんだ。だけど、残された方も残していく方もきっと寂しい」
「寂しかった。残されるのも、残していくのも」
手を強く握って、応えてくれた晴。
「……だから冬夜のことは、生きていてくれて本当に嬉しかった。もしも私の知らない冬夜がいて、何の思いも残っていなかったとしても嬉しかったんだ」
「冬夜さんはね、今も小夏のことをとてもとても好きだよ。多分、僕は永遠に勝てない気がしたよ」
「冬夜と話したんだね。そうなんだぁ。私のことを今も」
「何とか勝てるように一生かけて頑張るからね」
「うれしい。それに『ひまわり』も大切に歌ってくれてありがとう。手紙に添えた曲、聴いてくれたんだね。あれはね、晴と陽菜さんをイメージして書いた曲だった。でも、本当に本当は私と冬夜をイメージして書いた曲でもあったの」
花火が一瞬だけ、静かになったと思ったら。
たくさんの花火が上がる。
多分、これがフィナーレ。
私の夏がもうすぐ終わる報せのようだった。
あの時よりもずっと近くで。
びっくりするくらいお腹に響くような音がして。
それでもその響きさえも心地よかった。
「小夏。せっかくの花火ゆっくり見て欲しいから、一旦車椅子に座って」
「うん。ありがとう」
晴はゆっくりと私を抱き抱えて、車椅子に戻してくれる。
酸素をつけ直し、脈をとりバイタルを確認すると笑顔で大丈夫だというように頷いた。
「花火、また見れたね」
「そうだね」
「全身で音を感じるね」
「音楽みたいだね」
「ほんとに、あ!」
「ラストライブでの花火は僕が許可しないからね」
ちぇって言うと、笑った春。
花火の音が大きいし私は上手くまだ声が出せないから、耳を近くに寄せて話を聞いてくれる晴が愛しくて、私は晴の髪を撫でた。
「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た」
「それにこの汽車石炭をたいていないねえ」
私はまるでカンパネルラになったような気持ちで晴に話すと、すぐに続きのセリフを晴は言った。
「あ、すごい。晴。読んでるんだ」
「『銀河鉄道の夜』は読んだことあるよ。もちろんあの時の『星の王子さま』も」
「ねぇ晴、やっぱり好きな人と離れちゃうのは寂しいね」
「自分の存在価値を誰かの心の中に強く焼き付けて消えていけるなら、僕も消えてしまいたい。陽菜のことでそんな風に思ったこともあるんだ。だけど、残された方も残していく方もきっと寂しい」
「寂しかった。残されるのも、残していくのも」
手を強く握って、応えてくれた晴。
「……だから冬夜のことは、生きていてくれて本当に嬉しかった。もしも私の知らない冬夜がいて、何の思いも残っていなかったとしても嬉しかったんだ」
「冬夜さんはね、今も小夏のことをとてもとても好きだよ。多分、僕は永遠に勝てない気がしたよ」
「冬夜と話したんだね。そうなんだぁ。私のことを今も」
「何とか勝てるように一生かけて頑張るからね」
「うれしい。それに『ひまわり』も大切に歌ってくれてありがとう。手紙に添えた曲、聴いてくれたんだね。あれはね、晴と陽菜さんをイメージして書いた曲だった。でも、本当に本当は私と冬夜をイメージして書いた曲でもあったの」
花火が一瞬だけ、静かになったと思ったら。
たくさんの花火が上がる。
多分、これがフィナーレ。
私の夏がもうすぐ終わる報せのようだった。


