キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

「小夏、もし疲れてたら眠っててもいいよ」
「いいえ大丈夫です」
「大丈夫なんかじゃなかったんだぞ。本当に心臓が一度は止まったんだ。だから本気で無理しちゃだめ」
「でも先生が私を連れ出してくれた」
「ハハ。言い逃れはできないな。病院に男の、僕より年上の先生がいただろう? 東条先生って言うんだけどすごく怖くてさ。説得するの大変だったよ」

カチカチ、とウィンカーの音がして車は高速の出口を降りた。
景色からは自然が増えて、病院から随分遠く離れたんだなと思う。いつも離れたいと思ってたから、嬉しい。

「東条先生はなんで許してくれたんですか」
「……命より大切なものがなにか、君の歌が教えてくれたからだそうだよ」
「そう……ですか」

私が歌ってた。先生たちや、それだけじゃない、きっとたくさんの人の前で。
夢だった歌手として。
お父さんのように、輝けていたのかな?

「そろそろ着きそう。気分はどう?」
「大丈夫です。どこに行くんですか」
「僕の秘密基地だよ。少し前にね、小夏も僕に秘密基地を教えてくれたから」
「ふふ、なにそれ。子どもみたいです。どこだったんだろ」
「すごく楽しくて、空気が澄んでいて。小夏らしいところだった」
「今度、連れて行ってくれますか?」
「どうだろう、勝手に行ったら僕捕まっちゃうかも?」
「私、どんなとこに先生を連れてったの!?」
「ハハ、面白いな。小夏はやっぱり面白いよ」
「ええ……」
「だから、きっと僕は何度でも好きになるよ」

しばし沈黙が流れる。
そんな難しい顔をするなよ、と先生がいう。

「ほら。外見てごらん」
「わ……わぁーー!!」

そこはちいさな渓流が流れていて、たくさんの蛍が飛んでいた。

「すごいだろ? 僕の秘密基地。ちいさな場所だからほんんど誰も来なくてさ。小夏には見せたいと思ってたんだ」
「キレイ……」

晴がまた車椅子に私を乗せてくれて、近くまで行ってみようと言ってくれた。