キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

「できるだけ晴の言う通りにする。ご飯も食べるし、無理もしない。だから約束のデートとライブだけはちゃんとさせてね?」
「うん、約束」

晴が小指を差し出してきたので、私も応じて指切りした。

「そう言えば、今、晴はbihukaのことで大変なの? たくさん人が来ちゃってるってゆかさんが言ってた」
「そんなことないよ。適当にあしらってる。それに小春さんやすみさんからも連絡きて、お仕事の支障にはならないようにマスコミは抑えますと言われたから出来るだけそうしてもらえるようにお願いした」
「そうだったんだ。私、自分のことはもういいって思ってたけど、晴のことまで考えてなくて⋯⋯ごめん」
「いいよ。小夏が突っ走るのにはもう慣れてるから」

思わず私は晴の白衣の裾をギュッと掴んだ。
掴んだ手を晴が握って包み込んでくれる。

「大丈夫だって。小夏が悲しむようなことには僕はならないから。今はゆっくり休んで治療して、デートとライブに備えなよ」
「分かった。ありがとう」
「あと小夏、無意識なんだろうけれど。一々可愛すぎるからさ。ちょっと抑えてくれないと色々困る」

そう言って、晴は少し顔を赤くしながら私が白衣を掴んでいた手を外し布団に入れてポンポンと叩いた。

「ふふ、ごめんなさい。病院にいる間は患者してるから」
「頑張ってください。じゃあまた後で来るから」
「うん。晴もお仕事頑張ってね」

白衣を翻して晴は部屋を出ていく。
医者としての晴の凛とした姿がやっぱり頼もしくて嬉しかった。
私も仕事をする時には自分だけの世界があって、それを誇りに思えるように、晴だって同じだ。
陽菜さんのこともあるし病院の中では晴が自分らしく働いてもらえるよう、私とのことはなるべく隠して、晴の思いを尊重しようと決めた。