家族を見送ったあとの説明室。
晴と東条先生が2人になる。
「キツかったろう。実際あと1,2日で思い出せるかどうかで、かなり予後に響くと思う」
「ですね。小夏はパニック発作も出ていたし、過去には精神科のコンサル歴もあります。また小夏にとって耐えきれないほどの試練が重なってしまったんです。でも先生こそ随分長くとどまってもらって。向こうの病院は平気ですか」
「大丈夫。お前が継いでくれると思ったのにさ、帰ってこないから。いつでも知り合いの医者何人かでまわせるようにしてるんだよ」
「そう、ですか⋯⋯」
「それに茜さんは俺の初恋の人だったんだ。思いは実るどころか、かすりもしなかったけどな。だから最後まで付き合うよ。どうせお前もいつかはまたこっちに来るつもりだったんだろ、小夏さんと陽菜のいる近くでって」
「はい。空気が澄んだ環境に小夏を連れていきたくて。もしも小夏が望んでくれたならいつかは、と。でもそんなのどうでも良かった。小夏が生きてさえいてくれれば⋯⋯そう思ってたはずなのに⋯⋯! 後のことはいくらでも⋯⋯取り戻せるはずだって」
「たくお前は、いつもそうやって強がるなぁ」
晴は東条先生の胸を借りて泣いた。行き場のない思いをぶつけるようにこぶしで何度も自分を叩きながら、どうして⋯…と呟き続けた。
「……あの日の夜。前回、ライブで倒れた日のことだ。彼女が俺の病院に運ばれてきて、もう歌うなってきつめに注意をしたら、彼女言ったんだよ。『どれだけ辛くても、苦しくてもいい。喪失や痛みを抱えても、それでもなおここは生きる価値がある世界なんだということを伝え続けたい』って。いまもきっと、彼女の中の炎は消えてはいないよ」
「だけど、もう時間が⋯⋯」
「晴、彼女はね。その時に生きたいって瞳をしてたんだ。それはきっと、お前と一緒に、なんだよ。恋をしている普通の少女の瞳だったんだ」
「小夏⋯⋯小夏っ⋯⋯!!! わぁーーーーー!!!」
「頑張れ。お前にしかできないことがまだある」
嗚咽のような大きい声がどこかから聴こえてきた。
どうしてこんなに胸が張り裂けそうになるの?
私、何にも思い出せないのに。
晴と東条先生が2人になる。
「キツかったろう。実際あと1,2日で思い出せるかどうかで、かなり予後に響くと思う」
「ですね。小夏はパニック発作も出ていたし、過去には精神科のコンサル歴もあります。また小夏にとって耐えきれないほどの試練が重なってしまったんです。でも先生こそ随分長くとどまってもらって。向こうの病院は平気ですか」
「大丈夫。お前が継いでくれると思ったのにさ、帰ってこないから。いつでも知り合いの医者何人かでまわせるようにしてるんだよ」
「そう、ですか⋯⋯」
「それに茜さんは俺の初恋の人だったんだ。思いは実るどころか、かすりもしなかったけどな。だから最後まで付き合うよ。どうせお前もいつかはまたこっちに来るつもりだったんだろ、小夏さんと陽菜のいる近くでって」
「はい。空気が澄んだ環境に小夏を連れていきたくて。もしも小夏が望んでくれたならいつかは、と。でもそんなのどうでも良かった。小夏が生きてさえいてくれれば⋯⋯そう思ってたはずなのに⋯⋯! 後のことはいくらでも⋯⋯取り戻せるはずだって」
「たくお前は、いつもそうやって強がるなぁ」
晴は東条先生の胸を借りて泣いた。行き場のない思いをぶつけるようにこぶしで何度も自分を叩きながら、どうして⋯…と呟き続けた。
「……あの日の夜。前回、ライブで倒れた日のことだ。彼女が俺の病院に運ばれてきて、もう歌うなってきつめに注意をしたら、彼女言ったんだよ。『どれだけ辛くても、苦しくてもいい。喪失や痛みを抱えても、それでもなおここは生きる価値がある世界なんだということを伝え続けたい』って。いまもきっと、彼女の中の炎は消えてはいないよ」
「だけど、もう時間が⋯⋯」
「晴、彼女はね。その時に生きたいって瞳をしてたんだ。それはきっと、お前と一緒に、なんだよ。恋をしている普通の少女の瞳だったんだ」
「小夏⋯⋯小夏っ⋯⋯!!! わぁーーーーー!!!」
「頑張れ。お前にしかできないことがまだある」
嗚咽のような大きい声がどこかから聴こえてきた。
どうしてこんなに胸が張り裂けそうになるの?
私、何にも思い出せないのに。


