晴は静かに私の話を聞いてくれた。
まるで長い旅のような話を。
「これで私の話は終わり。冬夜は言ってた。楽しいことや幸せなことにいつか終わりが来るように、悲しいことや辛いことにも必ず終わりがあるんだよって」
「小夏の気持ちはよく分かった。だけど、僕はまだ小夏のお父さんや冬夜さん、そして陽菜のいる場所に連れてはいかせない。何があっても」
「……」
「小夏が何度諦めて終わりを受け入れようとも、僕は……」
そこで、晴は二の句を告げなくなった。
私は何も言葉を返さず、ただ晴の瞳を見ていた。
言葉は蛇足でしかなくて、私の覚悟とか、心は揺らがなくて。
希望の言葉はそれを踏みにじることだと気付いたから。
「勝手で、ごめん……」
「私の中でまだ歌が聞こえる。そのうちは大丈夫。きっとまた色んなことが動き出すけど、晴は負けないでね」
私は晴を抱きしめた。
ありがとう、貴方は諦めないでいてくれて。
伝わらない願いは全て歌に託すから。
「キス、しよっか」
「小夏から言うの珍しい」
「今日は特別な日だから。大好きだよ、晴」
「僕も」
世界には私たち二人だけで、生きているみたいだった。
こんな時間が永遠に続くことはなくても、私の心の中に、晴の心の中に確かに残る。
講堂につくと、すみちゃんたちはもう来ていた。
そして、その後ろには楽器を携えたよく見知った人たちがいて、びっくりしたけどなぜか腑に落ちた気もして。
そこには晴のお父さんにお母さん、そして東条先生が居た。
「なんで、母さんたちが……」
「うちに昔の映像がありました。30年前に、1年間だけ現れた伝説のグループ。5人でSpicaだったんですよね?」
すみちゃんは初めから知っていた。
だから、昨日のうちにみんなを呼び寄せていた。
「そうだ……僕達がSpicaだよ」
晴のお父さんが応えた。
私は……何も知らなかった。
お父さんを連れ去ってしまった人たち。
その結果、冬夜を追い詰めた人たちを。
お母さんも壊れてしまって。
きっと全てを壊した悪者みたいに決めつけて、永遠に悪者のままでいてほしかったんだ。
自分の心を守るために、知ることを放棄した。
「ここに、太陽のような、茜とピカードがいて。たった一年だけ。ただただ楽しくて、2人の眩しい背中を追って……みんなで遊んでいたような日々だったんだ……」
「終わってしまったけれど、5人の絆は確かにあったんです。そして今度はその思いをbihukaへと託していくことができるはずです」
「そう。託したかったのに。今まで隠していたこと、ごめんなさい。それでも小夏ちゃん達のために。次に続いていくなら。力になりたいわ」
「母さん……」
「あまり期待はするなよ、出来ることをするだけだ」
東条先生にポンと優しく頭を撫でられた。
私は黙って頭を下げた。
「私は、皆さんのこと……家族を壊した悪者みたいに思っていました……。知ろうとすらしなかったのに。私の方こそ、ごめんなさい。でも私の歌にだけは嘘はないんです。人生の全てをかけて、本気で向き合ってきました。だからどうかここにいる皆さんの力を貸してください」
それだけ、振り絞るように伝えた。
みんなの目が優しくて、そこに答えがあった。
音楽も命もみんな、繋がっていた。
繋がっていくんだと信じられた。
まるで長い旅のような話を。
「これで私の話は終わり。冬夜は言ってた。楽しいことや幸せなことにいつか終わりが来るように、悲しいことや辛いことにも必ず終わりがあるんだよって」
「小夏の気持ちはよく分かった。だけど、僕はまだ小夏のお父さんや冬夜さん、そして陽菜のいる場所に連れてはいかせない。何があっても」
「……」
「小夏が何度諦めて終わりを受け入れようとも、僕は……」
そこで、晴は二の句を告げなくなった。
私は何も言葉を返さず、ただ晴の瞳を見ていた。
言葉は蛇足でしかなくて、私の覚悟とか、心は揺らがなくて。
希望の言葉はそれを踏みにじることだと気付いたから。
「勝手で、ごめん……」
「私の中でまだ歌が聞こえる。そのうちは大丈夫。きっとまた色んなことが動き出すけど、晴は負けないでね」
私は晴を抱きしめた。
ありがとう、貴方は諦めないでいてくれて。
伝わらない願いは全て歌に託すから。
「キス、しよっか」
「小夏から言うの珍しい」
「今日は特別な日だから。大好きだよ、晴」
「僕も」
世界には私たち二人だけで、生きているみたいだった。
こんな時間が永遠に続くことはなくても、私の心の中に、晴の心の中に確かに残る。
講堂につくと、すみちゃんたちはもう来ていた。
そして、その後ろには楽器を携えたよく見知った人たちがいて、びっくりしたけどなぜか腑に落ちた気もして。
そこには晴のお父さんにお母さん、そして東条先生が居た。
「なんで、母さんたちが……」
「うちに昔の映像がありました。30年前に、1年間だけ現れた伝説のグループ。5人でSpicaだったんですよね?」
すみちゃんは初めから知っていた。
だから、昨日のうちにみんなを呼び寄せていた。
「そうだ……僕達がSpicaだよ」
晴のお父さんが応えた。
私は……何も知らなかった。
お父さんを連れ去ってしまった人たち。
その結果、冬夜を追い詰めた人たちを。
お母さんも壊れてしまって。
きっと全てを壊した悪者みたいに決めつけて、永遠に悪者のままでいてほしかったんだ。
自分の心を守るために、知ることを放棄した。
「ここに、太陽のような、茜とピカードがいて。たった一年だけ。ただただ楽しくて、2人の眩しい背中を追って……みんなで遊んでいたような日々だったんだ……」
「終わってしまったけれど、5人の絆は確かにあったんです。そして今度はその思いをbihukaへと託していくことができるはずです」
「そう。託したかったのに。今まで隠していたこと、ごめんなさい。それでも小夏ちゃん達のために。次に続いていくなら。力になりたいわ」
「母さん……」
「あまり期待はするなよ、出来ることをするだけだ」
東条先生にポンと優しく頭を撫でられた。
私は黙って頭を下げた。
「私は、皆さんのこと……家族を壊した悪者みたいに思っていました……。知ろうとすらしなかったのに。私の方こそ、ごめんなさい。でも私の歌にだけは嘘はないんです。人生の全てをかけて、本気で向き合ってきました。だからどうかここにいる皆さんの力を貸してください」
それだけ、振り絞るように伝えた。
みんなの目が優しくて、そこに答えがあった。
音楽も命もみんな、繋がっていた。
繋がっていくんだと信じられた。