キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

晴と一緒に病室に戻るとすぐに点滴などの治療が再開され、ネブライザー治療もした。

「しばらくは絶対安静。前みたいにもしここから逃げたりしたら、今度は本当にラストライブの許可も出せなくなるからね」
「分かってるよ」
「北海道まで行くのに飛行機に乗らなきゃ行けないし、どれだけ身体の負担になるか予想できないからこそ万全で行こう」
「うん……」
「疲れてるだろ。とにかく今日はゆっくりおやすみ。僕も当直室で寝てるから何かあったらすぐに呼んで」

私は頷き、晴を見送った。
別に晴の言ったことややることに異論なんてないけど、一瞬で医者と患者に戻ったような気がして、寂しかった。
退院したらまたデートしてくれるって言ってたけど、いつになることやら。
私はため息をついたあと、暫く物思いに耽ってたけど、気が付くといつの間にかぐっすり眠っていた。

冷たい感触がして目が覚める。
目が覚めると晴が聴診していた。

「小夏、ぐっすり眠ってるところに悪かったね」
「おはよう」
「うん、おはよう」
「どう、私の状態」
「夜中も心配で何回か診にきたけど、いつもの小夏にしてはいい方かもよ」
「ふふ、なにそれ」
「ただ少し熱も出てる。疲れもあるんだろう。とにかく余計な気を使わないように今日は面会も禁止。小春さんたちには連絡しとくから。ゆっくり休むこと。続きは明日また考えよう」

晴は指先で優しく私の髪をサラッと撫でると、そのまま出ていこうとした。

「晴!」

私はふと彼を呼び止めた。
晴は振り返る。

「どうしたの?」
「昨日、ちゃんと言えなかったから。沢山迷惑かけてごめんね。沢山ありがとう。晴がいて良かった。安心できた。私、幸せ者だね」
「こっちこそだよ。小夏を見てると、力を貰えるんだ。bihukaを見てると、奇跡を信じられるんだ」
「私も信じたい。あと聞きたいの。ライブが始まる前、小春になんて言ってたの?」
「お姉さんに何があっても小春さんが支えてあげて。君にしかできないことだから。そう言っただけだよ」
「そっか……ありがとう。いつかね、私の家族のことも全部話すから。その時は聞いてくれると嬉しい。でも、今も、これからも先もずっと、私が一番歌を届けたいのは晴だよ」
「うん、分かってる。あ、そうだ。昨日、渡しそびれてた花束、そこに飾っておいた。それじゃまた来る」

晴は今度こそ、病室を出ていった。
そこにはデイジーの花束があった。
花言葉は、「希望」「あなたと同じ気持ち」
私はいつまでもその花束を眺めていた。