キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

8月3日のゲリラライブからちょうど一週間が経った。

私は今、晴が勤務する逢坂大学病院に入院している。
病室の窓から見える入道雲と青空のコントラストはとてもきれいで、夏が1番輝いてる季節だなと思った。
そんな時に入院してる場合じゃないんだけど、と思いつつもここ数日は晴の診察や小春とすみちゃんが面会に来た時以外は、ほぼほぼ寝て過ごしていた。

「小夏ちゃん、点滴変えるよー」
「ゆかさん、おはよう」
「お、今日は大分顔色いいね」
「ほんと!? そろそろ帰れるかなぁ。来週、大事な用事があるんだよね」
「藤が谷のショッピングモールでライブだよね?」
「え! なんで知ってるの?」

私がベッドから起き上がり身を乗り出して答えると、ゆかさんにまぁまぁと制される。

「なんでも何も、小夏ちゃんはずっと病院だから知らないかもだけど、この間のライブからもうみんな知ってるよ? 因みに諏訪野先生の周りも大騒ぎ。メガネかけてたし、何とか別人だと誤魔化してるみたいだけど、あれはもう無理だね。」

「え〜。晴は何にも言わないから知らなかった。怒ってるかなぁ」
「て言うかいま小夏ちゃん、先生のこと呼び捨てにした? え、つまりそういうこと?! いつの間に〜!!」

ゆかさんにはバレバレなので、私ももはや笑って誤魔化すしかない。
ツンツンとほっぺたをつつかれ、すべてを白状するように急かされるが、ここは晴の職場だから本人に確認しないことには何とも言いがたい。

「て言うか2人とも、病室ではしゃぎ過ぎ」

ここで満を持しての晴が登場する。

「先生、なんかおめでたいですね」
「何が。高瀬さんはもう少し落ち着いて。小夏の身体に障るから」
「ごめんなさい⋯⋯」
「晴、あんまりゆかさんを怒らないであげて。私のことを元気づけようとしてるだけだから」
「分かってる」

ゆかさんがあとはお若い2人にお任せします〜とニヤニヤしながら部屋を出ていった。
この様子じゃまた晴に後で怒られるなと思いながら見送った。