キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

よしよしと頭を撫でてくれる、晴。
僕の前なら大丈夫。
ほら泣け泣け、どんどん泣けという。
気が付くともう、周りにはほとんど誰も残ってなくて。

「聞いてくれた? 私の声」
「うん」
「届いた? 私の歌」
「ちゃんと受け取ったよ」

晴はそっと頬にキスして、舌で涙を拭ってくれた。

「もう、ほんとにいくらでも泣けちゃうからやめて」
「あれ。小夏は意外にこういうとき泣き止むタイプだと思ったんだけどな」
「バカはる……大嫌い」
「ほんとは?」
「大好きに決まってる……ぐすっ」
「知ってる」

またギュッと強く抱きしめてくれるから、涙が出ちゃう。
気が付くと、頭上にはきれいな満月が見えていた。

「ふふ……これキリないね」
「だな。そろそろ帰ろうか」
「……いやだ。病院には帰りたくない!! 私、頑張ったよ。すごく頑張ったから。もう少しだけ」
「小夏の体が心配だから本当はもうどこにも連れ回したくないよ。はは……こんなとこ東条先生に見られたら、僕が殴られちゃうな」
「晴……?」
「それでも僕も一緒にいたい。小夏といたいよ……」

時間が止まればいいのに。そう、強く思った。

「今日は初デートだもんな。ちょっとだけ遠回りして帰ろう?」

遠回りが一秒でも長いことを願いながら、私は晴の車へと乗った。