キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-


『GIFT』


1. 愛だとか好きだとか曖昧な言葉で私を縛らないでよ
優しさとか 温もりとか あげたつもりで
どうせ すぐ突き放すくせに!!

もう君なんて大嫌い 大嫌い 大嫌い
これで機嫌直してとか言ってお菓子くれるの 笑わせないで 君の代わりなんていくらでもいるんだから

「これからもよろしくね」
つないだ手が優しかったあの日のことを覚えてる?
ドキドキしてワクワクしてキラキラしてた
ほんとうにこれからもずっと一緒だって
君から言ったのに
約束は守ってよ

I believe 君のこと信じたいのに
どうして そっぽを向いてしまうの
気が付いたら 君の真似して飲んでたミルクティー
甘いのに苦い どうしてなの
君と出会って
忘れたくないことばかりが増えてくの どうしてなのーー


「小春さんも真っ直ぐで素敵な声だわ」

小春の歌う『GIFT』を聴いたゆかさんが、驚いたように声を漏らした。
曲は間奏に入り、また時間を作るように、小春が観客に手拍子を促す。

よく見積って、残る時間はきっとあと1分くらい。

1分もあるじゃん。
不思議ともう苦しくなくて、頭の中がスッキリとしていた。

小春には小春にしか出せない声がある。
それをもう私はとっくの昔から知っていた。

知っていたのにーー

「晴、先生、ゆかさん。私、大丈夫。薬は要らない」

私は立ち上がって、フラフラしながらも腕に刺さった点滴の針を抜く。真っ赤な血が腕を伝って流れた。

「小夏、無茶をするな」

晴がすぐ私の腕を抑えて止血してくれる。

「今なんだよ。晴」
「もういいんだ。やめてくれ。小夏が壊れてしまう……」
「聞いて、晴……あの時、2人で花火を見た日、伝えたでしょう? その時がきたら見守って欲しいって。それが今だよ。小春が……信じて待ってるから」

それに、と言って私はポケットから例のお守りを出した。

「私には、これがあるもん!」
「あら、それ諏訪野先生の小さい時?」
「晴が小学生の時の写真だな。この後シュート決めたが、ずっこけて大泣きしてた」

ふふ、と私は笑う。
晴は照れくさそうに顔を隠す。

「晴、ありがとうね。私もっと強くなるから見てて」

私は、お姉ちゃんだから。
いつまでも小春に背中を追いかけて貰えるように。
絶対に、絶対に負けたくない。

「歌姫の帰りをみんなが待ってる。行ってらっしゃい」

悲しそうな声でそう言って、晴が見送ってくれる。

私は再びスポットライトの下に降り立つ。
安心したように、小春からマイクを託される。
そして頷く。

「みんな、ただいまー!! 待っててくれてありがとう。やっぱり『GIFT』は元気になる曲だよね。私の自慢の妹、小春の歌も最高だったでしょう?」

拍手と歓声が上がり、小春は泣きそうな笑顔で手を振った。

「たまに困ったり泣きそうなときにはこの曲を聴いてね。元気を取り戻すきっかけを貰えるはずだから。また歩き出せるよ!!」


私は再び歌い始める。
大きく息を吸い、声を出す。
迷いも恐れも不安もなかった。


「『GIFT』それはね、愛される喜びじゃなくて愛する勇気だったんだーー」