キミのために一生分の恋を歌う② -last stage-

しばらくすると晴が焦った様子で戻ってきて、私の意識が戻っていることを確認するとホッとしたようだった。
東条先生は多くは語らず、また会えることを楽しみにしていると言い処置室から出ていった。
晴は戻ってきてすぐ診察をするとそれから1時間くらいはもう少し様子を見ると言って、私のそばからずっと離れなかった。

「もうそろそろ外してもいいかな、酸素。そのままゆっくり呼吸して」
「うん……」

酸素マスクを外し、丁寧に聴診している晴。
そっか、晴の聴診は東条先生のとよく似ている。
2人の間に流れた歴史を少しだけ感じられたようで微笑ましくなった。

「……ようやく落ち着いてきたな。しかし小夏のことだから、あの東条先生まで捩じ伏せたんだな」
「なんのこと?」
「だって、治療にはうるさい先生がこの状態の小夏を置いて、ほとんど何も言わずにおとなしく去ってくなんて有り得ない。生まれて初めて見たよ。絶対先生になんか言っただろ?」
「だってもう歌うなって言うんだもん。どこかで確かもう1人にも同じようなこと、言われたことがある気もしたけど?」
「ハハ、そうだったのか。そりゃ先生も負けるわ。小夏の特大地雷ワード」
「でしょう?」

その後、晴と私は改めて東条先生にお礼をして晴の車へ乗った。
しばらくは向こうで入院して静養しながら様子見となるらしい。