幼い頃、父への記憶は ほとんどない。 帰りが遅く ただ、仕事に真面目な人。 それだけだ。 だが、大人になるにつれ、 帰りは決まって、ご飯の時間。 家族揃ってのご飯。 楽しく会話… なんて、夢のまた夢のような話だった。 始まるのは、自慢話か マウントの話。 「俺は昔すごかった」 「県大会で優勝」だのなんだの ニュースの話になれば 「要するにだな、これはこういうことで…」 全部知っているかのように 話し始める。