立ち止まっていた私を、無理やり引っ張る。
蒼伊の手のひらがわたしの手首をつかむ。どこか機嫌の悪そうな蒼伊に、大人しく引っ張られた。
家まで送るなんて、するんだ。剛くんみたいなこと、するじゃん。
いや、剛くんに絶対送れよ!って言われたのかも。
蒼伊、普段ならめんどくせーっていいそうだもん。
「……ありがとう、」
「最初からそう言えば可愛いのにな」
「ば、可愛くなくて悪かったね!」
可愛い女の子は、こうやって送られるときに素直にありがとうって喜ぶのかもしれない。
そんなの知らないし、送られるなんて、高校入ってから一度もなかったし。
というか、最寄りまで来てくれるような仲のいい男の子なんて、いないし。
きっとモテてきたような蒼伊は、可愛い子の一人や二人家まで律義に送ったりしているんだろう。慣れたように、送るとか言って。
「なにむすっとしてんだよ、そんなに気に食わねえか、送られんの」
「そっちこそむすっとしてたじゃん、本当は送るのめんどくさいけど、建前でやってるんでしょ」
「……アホか、お前」
「アホじゃないもん」
捕まれていた手が、ぱっと離れる。
言い過ぎたんだ。ああいえばこういう、わたしの悪いくせ。
蒼伊のほうを見れなくなって、居心地の悪い空気のまま、足だけ進んでいる。



