夕方のオレンジ色だった空は気づけば紫色に変わり始めて、ギターをしまいながら蒼伊は腹が減ったとこぼす。


「お菓子食べる?甘い物しかないけど」

「いや、飯食い行こ」

「あ、そっか」

「帰りたいなら帰るけど」

「いや、お腹すいたし、行く」

「あ、そ」


そのまま、二人でご飯を食べに行った。
二人でご飯を食べるなんて、変な感じで。

わたしの最寄り駅まで、蒼伊は来てくれた。普通のファミレスに行って、わたしはドリアを食べたし、蒼伊はハンバーグを食べていた。

二人で向かい合ってご飯を食べるのなんて初めてなのに、初めてじゃないような感覚。蒼伊と一緒にいる時間が増えるたびに、違和感が消えていって、気づけばずっと仲が良かったような普通の友達の距離にいる。
こうやってそのうち、いちいち蒼伊に振り回される感情も慣れていって、普通になるのかもしれない。



「家、こっからどんくらい?」

「歩きだったら、20分くらい?」

「どっち?」

「あっち」

「へえ」


ファミレスを出て、駅の前。
家の方向を聞かれて指を差せば、蒼伊はそっちの方に足を進める。



「え、電車こっちだよ」

「家まで送る」

「え、」

「え、ってなんだよ」

「全然一人で帰れるよ、超地元だし」

「いい」

「いいって、」

「なんかあったら後味悪いんだよ、こっちが」

「そんなに治安の悪い街じゃないよ、」

「文句多いな、黙って送られてろよ」

「だって、」

「深咲が進まなきゃどっちかわかんねーの、はやくしろ」