蒼伊って、結構優しい。
リクエストされた曲をフルコーラスで歌い切ると、「すげー!」なんて言いながら男の子たちは全力の拍手を蒼伊に送る。



「はい、終わり」

「ねえ今度俺にギター教えて!」

「やりてえの?」

「うん!だってオニーサンがかっこいいから!」

「中学生になったら教えてやるよ」

「そのときまでここ来てくれるの?」

「気が向けばな」

「約束だからな!」

「気をつけて帰れよ」

「オニーサンも、オネーサンと楽しんでね」

「オネーサン、やっぱりオニーサンのギター弾くのかっこいいよね?」

「そっちに絡むなよ」

「うわ、シットじゃん!」

「オニーサン、シットしてんだ〜」

「誰がお前らクソガキに嫉妬するかよ、負ける気しねえわ」

「かっこい〜ひゅ〜」

「まじ帰れ」



少年たちは楽しそうにブンブン手を振りながら帰っていった。
わたしの方にもバイバイ!ってしてくれて、気をつけてね、と見送る。

蒼伊は疲れたような顔をしていて、また見たことのない蒼伊を見つけて、おもしろい。



「意外だね、子ども好きなの」

「好きでも嫌いでもないけど、あいつらは絡んでくるんだよすぐ」

「元気な子達だったね」

「あれ歌えこれ弾けって注文が多い」

「蒼伊のファンだ」

「珍しいんだろこんなとこにいるやつ」