わたしは電車通学なので、駅の反対方向のことはあまり知らない。
電車通学と言っても、2駅くらいしか乗らないので頑張れば自転車でも通学できる距離だ。
蒼伊は徒歩かバスで通学しているらしい。私よりも学校が近いらしく、ギリギリまで寝れるのはすごく羨ましい。


ここら辺のことはよく知っている蒼伊のいく方をただついて行けば、駅を越えて反対側にある川沿いまで来た。
電車から見える景色でしかなかった場所だった土手には、ジョギングをする人や下のグラウンドで遊ぶ子供の姿が見える。



「夕焼けが綺麗に見えそうだね、ここ」

「邪魔するものないからな」

「屋上みたい」


大きな川の反対側は少し賑わうひとつ隣の駅になっているらしい。
川の周りには大きな建物がなくて、景色が広く見えた。

川沿いを少し歩いたところで、蒼伊は足を止める。



「降りるぞ」

「え、ここ?」

「滑るから気を付けろ」


子供たちの遊ぶグラウンドを少し過ぎたところ、斜面になっているところを急に下り始める蒼伊に慌ててついて行く。
少し下に下がれば、コンクリートのところがあるらしい。



「え、怖い滑る」

「ローファーだと滑んだよな」

「全然へっちゃらそうに行くじゃん!」

「俺は慣れてるから」

「ちょ、置いてかないでよ!」



とっとと先を言って下にたどり着いた蒼伊は、リュックとギターケースを置いてまたこっちに戻ってきた。



「ん、」

「え?」

「手」