蒼伊は首にかかっていた赤いヘッドホンを取り、そのまま私に手渡した。
「え、」
「つけて」
言われるがままに受け取ったヘッドホンを頭にかぶせる。
ヘッドホンをつけるのは初めてだった。
「え、ねえこれ大きいかも」
「そのうえんとこで縮められるだろ」
「え、どこ?」
「ここだって」
「、」
隣で並んで歩いていた蒼伊が一歩わたしの前に立って近づく。
わたしに向かって伸びてくる手に、思わず目を背けた。
いきなり近づいた距離に、息が止まる。
見上げればなんてことない顔をして視線が合わない男が素早く調整をして、頭にのっかった手が離れていく。
「痛い?これ」
「い、たくない」
「そ、じゃあこれで」
「あ、うん、ありがと」
あっという間に距離は元通り。
わたしの心臓だけが、戻らない。
わたしだけが、変に意識してしまっているみたいで、恥ずかしくて、サイアクだ。
顔が熱くなってる気がして、それだけばれないようにさりげなく下を向いた。
『♪~~~』
なんの合図もなしに、急にヘッドホンから音楽が流れ始める。
びっくりして顔を上げれば、蒼伊がこっちを見下ろして驚いたわたしに笑っていた。
蒼伊が先ほどまで聴いていた音楽だろう曲のイントロは、結構激し目のロック!って感じの曲だった。
と思ったら、うたいだしで印象が変わる。サウンドはずっとアップテンポでかっこいい感じなのに、歌詞はすごくあったかくて優しかった。



