「……部活、は?」
沈黙に耐え切れず先に声を発したのは私。
ありきたりな言葉しか思い浮かばなかった。私はこの人ほど無口ではないけれど、マネージャーをしているバスケ部の男子と剛くんくらいしか異性で会話をする人はほとんどいないから。
無口な菊池蒼伊だけど、オンナノコの耐性はありそうっていう偏見。
そんなこと言ったら、むすっとされそうだけど。
女子のことあんま好きじゃないのかもしれない。
わたしも男子のノリとかテンションが子供っぽくてあんまり好きじゃないし、と勝手に同類だと思い込んだりして。
「自主練だから、いま」
「あ、そうなんだ」
「…比奈瀬は?」
「わたしは…まあ、ちょっと抜けてきたみたいな」
「サボり?」
「いや、サボりたいとかじゃないんだけど」
そりゃあ自主練の時間もあるよね、うちの部だってそうだし。
わたしがその大事な自主練の邪魔をしなければ、こっそり一番近くで菊池蒼伊の音楽を聴けたのかもしれないと思うと、ちょっと後悔する。
「それをさぼりって言うんじゃね、」
何言ってんのみたいな顔をして、笑われた。
ちょっとバカにされてるみたいでムカつく。けど、それよりも大きな感情で、この人ふつうに笑うんだ、って思った。



