剛くんが戻っていったあと、涼子とふたりになる。
涼子は私のことをじっと見つめて、呆れたように零した。



「……友達、」

「友達、ねえ」



涼子だって同じでしょ、
そう言おうとして、やめた。

涼子と剛くんは、友達って言葉じゃ片付かない、わたしには知らないところがある、かもしれないから。
あなたとは違う、と涼子に一蹴されてしまいそうで。



「厄介な言葉ね、どいつもこいつも」

「どいつもこいつも?」

「こっちの話」

「なにそれ」

「まあ、いいのよそんなこと。楽しんで。祭りのときに詳しく聞かせてもらうわ」

「そんな話せるような面白いことないよ」

「じゃあわたしもなんも面白くないバイトの先輩の話とかしてあげるわよ」

「え、なにそれ!どういうこと、どんな関係?彼氏候補?」

「祭りのときまで言わないわ、交換」

「涼子ってホントずるいよね」



涼子はこういう駆け引きが上手だ。
元々の頭がいいのもそうだけど、出会った頃からずっと大人びていて、同い年には思えないところがたくさんある。

でも私は剛くんのことを応援したいので、そのバイトの先輩の話はすごく聞きたい。
そんな涼子が喜ぶ話なんてひとつもできないだろうけど。



涼子と教室の片付けなどを最後まで付き合っていたら、教室にはもうほとんど人がいなくなっていた。
蒼伊の姿も見当たらなくって、涼子と剛くんに茶化されながら教室を出る。


屋上にいるってわかっていくのと、昇降口で待ち合わせをするのは、同じようなものなのになんか違う気がする。
なんかそわそわするし、いつもよりも周りをきょろきょろしてしまう。