「涼子、剛くんとラーメン行くんだよね」

「ラーメンは却下してファミレス行く。深咲も一緒に行こ」

「あー、今日は」

「蒼伊が先約らしいぞ、涼子」

「え、」


お菓子をもらいに来た剛くんが涼子に告げ口をする。
二人で目を合わせて、それから二人してこっちを見てきた。


「デート?」

「違うから」

「いつもの屋上、夏休みバージョンってことだよね?ミサキちゃん」

「剛くん、蒼伊に怒られたほうがいいと思う」

「ファミレス誘ったのに無理って言われたから問い詰めたら、『今日はミサキ』って言われちゃいましたわ」

「なにそれ、わたしも聞きたかったんですけど」

「ふたりともうるさい」



涼子は自分が茶化されてもツマンナイ返ししかしないのに人のことはめちゃくちゃ弄ってくるからたちが悪い。
ましてや剛くんの気持ちを知ってしまったから迂闊に茶化せなくなってしまった。



「蒼伊とは涼子が茶化したいような感じにはならないから」

「なんで断言するわけ?」

「あの人はめちゃくちゃ有名なバンドマンになる予定な人だから、色恋で騒ぐほど暇じゃないもん」

「なにそれ、まだ知名度なんてほぼないのに先のこと見すぎじゃない?好きになるのなんて自由よ」

「好きになってもいいことないよ、どうせ傷つくのはこっちなのが目に見える」

「そう思ってしまってる時点で深咲も菊池蒼伊のこと気に入ってるんじゃない」

「……違う、蒼伊はただの、」

「友達?」