背中にギターケースを背負った彼は、わたしがいつも教室で見る菊池蒼伊の姿だった。

関わりのない、話したこともなくて、ただ一方的に彼らの練習を聴いていただけだったのに。



変わってしまった。
関わってしまった。
一緒にいるのが、楽しかった。



「……来週も、くるよ」

「……じゃあ、わたしもくる」

「今日よりいい音出せるといいな」

「わたしはもう聴く専門です」

「そんな簡単には聴かせねえ」

「え、なんでよ」

「なんでも」

「意地悪なんだ」

「意地悪だよ」



彼に続いて私も立ち上がる。
アオイは部室に戻るんだろう。わたしも、そろそろ戻らないと怒られる。



「来週も、同じ時間にいる?」

「んー、わかんないけど、たぶん」

「わたし、その日によるんだよね、部活の」

「連絡して、じゃあ」

「え、」

「えってなんだよ。クラスのグループ探せばいるだろ」

「……たしかに」

「俺はここいるから」

「わ、かった」

「ん、じゃあまた」